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肉体離れた霊体が帰ってくる、道教の行事
台湾には鬼月という概念が存在します。
これは道教を主軸とした考え方であり、死者はまず地獄に向かって生前の罪を償ってから天に向かうというものになっています。ですがそう簡単に罪の浄化ができるのものではありません。
ずっと地獄でつらい浄化に耐えるのはどんな人でも心が壊れてしまいます。
そこで旧暦の鬼月には普段しまっている地獄の門が開き、一定の功徳を積んで次の天性に備えることができる霊的な存在が家族のもとに帰ることができるとされています。
日本でも盂蘭盆などで一部同じようなものがありますが、盂蘭盆の方が後とされているなどもあり二つの文化を混ぜ合わせてできたのが地獄門と鬼月の概念と考えてもいいかもしれません。
ですが、鬼月や地獄門といった文字だけでも霊的なものに興味のある人にとっては心が躍る部分があるのではないでしょうか?
鬼月の最終日は7月30日になり、この日のうちに地獄に戻らないと霊的な存在は罰をさらに受けることになります。
同時に地獄門も閉まることになるのでこの世に残ってしまい次の鬼月まで地獄に戻ることができず罰が加算されてしまいます。
当然ですが転生などもできなくなってしまうのでまた長期に刑罰を受けることになるのです。
できればぎりぎりまで家族や親しい人と過ごしたいという気持ちは霊的な存在も同じです。
7月30日はいわゆる大移動のような形で地獄に戻るものが多く、事前に戻るものは少数という見方もされています。
旧暦の七月すべてが鬼月になるので日本のお盆のような数日間の滞在よりもずっとながく滞在できるという独自の文化でもあります。
もちろん、地獄の門が閉まることで霊的な存在の家族が無事に地獄に戻れるのは現世にいる安心できることと考えられています。
亡くなった家族を地獄の罪人にしなくて済むという部分です。
このような考えはどちらかというと戦後の台湾の方が持っていることが多く、戦前の台湾の方はまた違うものを考えていることも珍しくはありません。
まして現在の台湾のティーン層となれば?という部分も出てきます。
今回はこの鬼月におきる鬼月騒動のお話を台湾在住の千鶴さんにインタビューさせていただきました。
近年の扱いはサブカル的。一時的に霊感商法も増加
先生は“また作り物の話が出回る季節だな”っていいますね。旧暦で名前が鬼月だから其れにかこつけたホラーイベントやコスプレイベントなんかも多いですよ。日本のゲームやアニメの鬼っ子のコスプレの人とかもみましたもの。即売会とかも鬼月に盛り上がろうみたいな感じでサブカルチャーとしての場所にもなってる感じはありますね
あまり聞かないですものね鬼月という言葉も。日本だと如月とか響きがいいからってホストとかが名前によく付けてる感じはありますけども
ホスト(笑)Kさんは割と調べる人だからあれですけども、実際の意味や由来を知ったらおいそれとは使えないですよねえ
ですねえ。きさらぎ駅なんかもその響きでしょうし。私も知らなかったんですけどもきさらぎって読みで鬼って文字も出るらしいですね。あと台湾にはきさらぎ駅があるとかそんな話もありましたけども
日本のネットユーザーもその辺はすごく調べますよね。実際にきさらぎではないですがそれに近い駅はありますからね(笑)
だと、鬼月にはその駅からいろんな方がくるとかになるんですかね?
いやー、今だとエンタメ化されてるから鬼月と地獄門自体がエンタメになってますね。特集とかも組まれますし。主にはサブカルの紹介と鬼月とは~で先祖への敬意を持つようにというのは感じますけどもね
でますでます(笑)道に占い師とかも増えるのも前はあったみたいですね。そういう雰囲気とかがあると普段よりもお客さんも増えますし
偽霊能者や霊的な相談アカウントとかが一気に増えますよ(笑)なのであまりにも目に余る場合には予約を入れて実際に対面しにいったりもしますし
こっちに来てからか何度か対面系はありますよ。あって説得して今だとまだ安全に過ごせるからやめた方がいいって提案はします。実際に私もただ見えるだけ聞こえるだけで何もできなかったのが結構辛かったのでその辺の話もしますよ。そうやって霊的なものを使っているといずれ見える聞こえるになってしまう。その時にどうすべきなのか、自分を守る能力を身につけさせてくれる先生になるような人に当てはあるのかとか。その辺を説明するとアカウントを消しちゃう人が多いですね。こんな怖いことできないみたいな感じで
私も何度か偽霊能者問題には立会させてもらってるんですけどもいい結果になったのをみたことがないですね。皆さんあまりよくない方向にいってしまったりしてて
大体はそうなりますよね。私の知ってるそういう人で最終的にどうにもならなくてインドにいって僧侶として生きることになった人もいますもん
どうにもならくて仏門や僧侶になるって方も少なくないですよね
そうなんですよ。一度本当に見入られたりとり込まれてしまうと、もうどうにもならないんです。こちらがどれだけ説得しても理解はしてもらえない。だから影響の少ない場所に行くしかないんですよ
ここで筆者はTさんが海外にいる事を思い浮かべました。
Tさんの現状はいいものですが将来的なものはあまりよくない方向に向かっているからです。
もし本当に仏門や僧侶などになって霊的なものの影響を受けないようにできる場所があるのならば、その選択肢もあったのではないだろうか?と
ただ恵子さんもおっしゃってましたが選んだのはTさんであるように、自分がどのようになるのかを決めるのも霊的なものとの付き合い方をどうするのかも自分が決めるものになります。
千鶴さんのように国外に先生となる存在を紹介され、霊的な能力や言語を身に着けている人もいます。
「こっくりさん」で呼び寄せた心霊事件
まあ、人の気持ちがそういったものに寄ってしまってる時はあまりよくないものとかも取りやすくなるんですよ。極端ですけども小学校でこっくりさん禁止令とか
あー、私のいた小学校でもありましたねこっくりさん禁止
大体は無意識に誰かが動かしてるテーブルターニングなんですがこっちだと新聞の上に小さなお皿をのせて文字を選んでいくやり方で碟仙(ディエシェンてよばれてますね。まあ、台湾式こっくりさんでアレンジがされているというか多分日本統治下時代に持ち込まれてアレンジされたのかな?韓国でも日本統治下時代にこっくりさんが持ち込まれて独自の発展をしたみたいですよ。みんなそういう不思議なものは大好きですからね(笑)
答えからいうと来ますね。それがどのランクなのかはわからないですけども、たちの悪いものや動物霊というよりもその辺にいるものが出てくることがありますね。でもそういったものは単純に子供と触れ合いたいものなんかもいるので、その時は少しの会話をして去っていきますね。子供もですがダメなのは、大人が召喚儀式としてこっくりさんをやっちゃうやつです
です。簡単に呼び出せるので思わぬ大物を呼んでしまったりもありましたよ。戦死した兵士が帰ってくれないと先生に駆け込んできた人もいましたし
やっぱり旧暦の鬼月にやったんですよ、こっくりさんを。そしたら呼び出されたものがどうも東南アジアで壮絶な戦死をした米兵だったらしくアメリカに帰りたい。水が欲しい、酒が欲しい、お前らの命が欲しい、誰かの命を出せとかになってきてしまったらしく
太平洋戦争だったらやばいですね。ベトナム戦争だったらまあよくはないけどもまだ……
太平洋戦争だったんですよ。なので誰かの命をよこせってことになってしまって先生が砂盤(除霊、対話などに使う道具)をもって私も一緒にそこにいったんです
明らかにこの子だなっていう取りつかれ方をしてることがいてその子がずっとお皿を咥えてるんです。それでも文字が脳裏に浮かぶようになっているくらいになっていて
千鶴さんの先生の使う砂盤は大きめの陶器製の平皿ボールようなものの上に、二人が手をのせることのできる回転式の天秤を中心につけたものになります。
何かあればその天秤が左右に振れることで相手の気持ちの変化がわかり、砂に模様などが浮かぶことで言葉での対話が難しい場合でもなんとか交渉に持ち込めるように先生が独自に作られたものらしいです。
砂も星砂の細かなものを千鶴さんが買い付けてきて一度使ったら必ず新しいものに交換しているそうです。
子供の呼んだ心霊事件、霊能者が出動
砂盤に手をのせるように先生がその兵士に話をしたんです。あちらも、来たのがまさかのハイクラスの霊能者で驚いたのか指示に従いましたね
まず、この子たちがあなたを冒涜するために呼び出したわけでもない。体は大きくともまだ子供でもある。責任者は確かにいるがまずはそこは目をつぶってほしい。交渉は私が間にはいる。お前さんの希望をきこうか?って天秤を動かしながら聞くんですよ
兵士が故郷に帰りたい。ここは暑くてさみしい、みんな死んでしまった。みんなも連れて行きたいが自分ともう一人が限界だった。だから私は帰りたい、帰りたいってずっと言ってて
硫黄島に行く自衛隊さんなんかもいろんな体験なさるから敬意をもっていくことと、もしそういった先達の方をみたらお酒とかたばことかを置いてるらしいですね
ええ。それで先生がたばこを一本渡して火を差し出したんですよ。で、受け取って本当に美味しそうな表情をして“ああ……うまい……久しぶりのたばこだ……”って涙をこぼしたんです。取りつかれてるのは20代の女の子ですよ。なのに
本当にそこに兵士の姿が見えたんですよ。煙草を吸って本当にほっとした顔の。私は見えるからもちろん見えてるんですがその場にいた人が全員同じ兵士をみましたね
「タバコってすごく贅沢なものであり、でもそれを吸うだけでもちょっと今贅沢してるって気持ちにもなれるから好まれたんでしょうね。で、先生が落ち着いたか?じゃあお前さんの話を聞かせておくれよって砂盤を動かしていったんですよ
実際にその場を支配してましたね。激化した戦場で足を打たれてそこに虫が湧いた。虫が足を食っている。どうにかして逃げ切ったがキャンプごと燃やされたって
末期はどちらの軍も辛いことばかりだったって言いますよね。不利な状況でも日本軍は諦めずに向かってくる。自分事巻き込んで爆死していく。だからこそ長引いたし双方の犠牲が増えた
インドネシア独立運動に助力するくらいの気概をもった人たちですからね。だからこそ怖かった。だからこそ、家に帰りたいんですよね……で、先生が兵士から住所や名前を聞いてその日は終わったんですよ
「タバコやお酒を楽しみたいから少しだけこの体を使わせてほしい、危害は加えないって条件で先生はそれを認めました。あちらも先生を信頼してくれたので
で、住所は確かにあったのでグーグルアースで見たら名前もあってました。なのでフェイスブックで連絡を取ってみることにしたんです
こちらの状況を伝えて私たちは霊能者なのだが、台湾に来てもらうことはできるだろうか?って
私が連絡を取った人はどうも兵士さんの妹さんだったらしく、間違いなく兄です!って言ってくれてそれから渡航手続きをとってくださったんです。でも私英語あんまりできないんでスマホの翻訳アプリフル活用でしたよ。ただ、先生が英語できるのでだいぶ助かりました(笑)
日本よりもずっと出国に対する条件が緩和されてましたからね。その方が来るまでの間に兵士さんと話をして今自分の体がどこにあるのかなどを聞いてたんですがけっこうな僻地なのと多分もう骨もない、何もないって言っていて
でも場所はなんとなくつかめたんで、だめもとであちらからこっちに来る旅行者がいないかをツイッターやフェイスブックで探したんです
で、日本の方で台湾にも仕事で立ち寄りますって方がいてその方にお願いしてその場所の木の破片を持ってきてもらうことにしたんです。もちろんかなりこっそりですけども
で、その方からの画像を兵士さんに見せたら私だ!ってなったんですよ。兵士さんを吸収した樹木の破片であたりだったみたいです。で、その日本人の方も兵士さんと対面して“女の子なのにアメリカンだというか、米兵さんですよね?”って。自分の一部みたいなものが来たからすごく映像もはっきりしたみたいで……
で、妹さんを迎えに行って対面したら二人ともその瞬間に号泣なさってて。戦死にはなったけども何も遺留品がない、弔いもできないってずっとあったらしく。で、兵士さんが私のかけらをみつけてもらった。これを墓にいれてほしい。私もこれで帰れるって
先生も“せっかくだから台湾の美しさも見ていってくれ。おまえさんたちが守った未来でこの国は今こうして一つの国家として存在している。この平和をお前さんが作ったんだ。誇ってほしい、あなたがたは勇敢ある存在だって”兵士さんが少し恥ずかしそうにしてましたね
無事に帰れる流れでよかったですね。しかし、フェイスブックとツイッターすごいなあ
フェイスブックはそういう霊的なことやオカルト的なものに対するアンテナが結構ありますね。なのでフル活用しました。ネットからの悪いインターネットミームもありますけどもいい方向にもいきますねえ
はい。妹さんから後日フェイスブックに連絡があり、兄の埋葬ができました。ほかの親族にも台湾にいる善意あふれるシャーマンが兄を見つけてくれましたって伝えてくれたらしくて。善意あふれてるわけでもないんですけどもね。そのあとにこっくりさんをやった面子は先生からかなりきつく叱られてましたから。料金もそれなりに徴収されましたし。たまたま何かで台湾に流れ着いてしまった米兵をたまたま呼び出してしてしまった。そういうこともあるっていうやつですね。なのでこっくりさんというか降霊や憑依系はあまりしないほうがいいと思いますねえ
心霊事件は何がきっかけになるか分からない
なんとかできる場合ならいいんですけども何もできないと本当に神にすがって生きてくださいになってしまうので……そういう場所ってストイックですし娯楽もないですし。危ないことをしないのが一番なんですけどもね
まあ、こっくりさんとかは子供さんはみんな通る道っていったらそうなっちゃうけども
何がきっかけで事故が起きるかわからないですからね。やった面子はほかにも先生からお寺の掃除に二週間行けって言われてました。まあ、米兵だけじゃなく細かなものもついてましたからね。そういったものをそういう所での奉仕活動で振り落とすというか。反省よりもそっちがメインですかね
学ばないやつっているんですよ。またやらかして先生から本当にきつく言われた子もいますから
オカルトが好きなのはいいんですけども、自分で安全確保できない状態でやるのは勘弁してほしいですねえ。またなんとなく大物を引き当てやすいというか、アルファクラスターみたいな存在というか
次会ったときはちょっと本気でこっちの業種に来ないか話をしてみるかって先生も言ってるくらいに撒き餌の才能がありますね(笑)
いい話だけでは終わらなかった(笑)また改めてインタビューさせてください。今日はありがとうございました