目次
依頼者の家へ
千鶴さん
翌朝は手配してもらった馬車で相談者さんの家に向かったんでんすけども、凄い揺れるんですよ。山過ぎて車も入れにくいから、馬車が安くて便利って感じで
馬車はなかなかしぶいですね
千鶴さん
牛車も普通にまだ現役ですね。本当に都市部と農村部で全く違います。それで早朝に出発してついたのが昼過ぎでしたね。本当に田んぼが棚田になってて見る分には綺麗な風景でしたよ
いいですねえ
千鶴さん
で、農村の中では割と豪農っていうんですか?大きなお家で。先生が軽く挨拶をして私も先生の後に続いたんです。でも、なんというか悪い霊気とかを特に感じなくて
あら
千鶴さん
お子さんとかもいて、ちょっとのんびりした感じでしたね。で、先生がそのお子さんの前に座って”神様を作ったのかい?”って聞いてて
えっ
千鶴さん
で、子供さんが”作った。お母さんの病気がよくなるように毎日お祈りしたいから”って答えたんですよ。で”神様の所に連れて行ってくれる?”って。そのまま私は先生の後ろをついていったんです
お子さんってどれくらいの年齢だったんですか?
千鶴さん
はっきりと聞いてはいないですが多分7~8歳だと思います。で、その年代の子なのに陰陽とかも準備してあって。見様見まねで準備したんだと思います。石碑らしきものもあって。その近くに果物や野菜をきったものがあって。お供えかなって思ったんです
なんか、毎日お祈りできるようにって理由がもう……
千鶴さん
先生が”これはあなたのお友達の為のもの?”って聞いたら”そうだよ。友達が毎日来てくれるからご飯置いてる”って。これはそっちを退治するのかと思って私も構えたんですが
ええ
千鶴さん
先生の手にヤモリがのっていて”お友達はこの子でいいかな?”って。ヤモリのためにお子さんは毎日ご飯をそっと準備してたんですよ。でも、ヤモリがお友達?って私もちょっと疑問があったんですが
ですよね。私も思います
千鶴さん
先生が”お友達が頑張って神様になろうとしてる。でもこの方法だとよくない神様になってしまうから、お家を守ってくれる神様になってくれるように一緒にやろうか”って。基本的に先生は子供でもその辺凄いドライなんです。でも、神様を人工的に作ろうとした子にそんなことを言うんです
なんと……
千鶴さん
で、ふと気付いたら、うちの神様も子供さんの頭をなでてて。子供さんも”お兄ちゃんも神様?”って聞いてて。そうだよって。たまに本当にごくまれになんですけども、色んなものを無視して先生は行動するんですよ。で、先生がお子さんとすごく丁寧に話をしてて。子ども扱いではなく一人の人間の行動として神様を作ったことと、その神様が完成する可能性もあるけども悪いものになってしまうから一緒に作り直そうって提案をしていて。お子さんもすごく嬉しそうにして、先生からヤモリを受け取ってました
それで、どうなったんですか?
千鶴さん
お家の方に、神様を作ろうとしたのは子供さんであり、それはすごく純粋な気持ちからのものなので問題はない。ただ、いろんな方法が混ざっていて半ば呪法になってきてること。時々見かけるヤモリに話しかけ、食事を準備していたこと。ヤモリもその気持ちにこたえて自分が依り代になって神様になろうとしたこと。神様を作りたい理由も全部伝えていて
ちょっと泣けてきますね
千鶴さん
お母さんも泣いていて、お父さんは涙をこらえて息子さんを抱きしめていて。先生が”これは誰も神様を特定できないし、日によって姿が変わってしまう未完成の呪法だから見たことがないものになってしまう。まだ未完成であって神様にはなりかけの状態。今からちゃんとすればこのヤモリはこの家を守る神様になるけれどもどうしますか?って。もちろんご両親は”子供の思うようにしてほしい”って。先生も”感謝するなら私ではなくこのヤモリにですよ。このヤモリは大事にしてくれた友達のために命を捨てる覚悟をしている。意志の通じ合わないはずの二人が思いを繋いだ。これはとても尊いことなんですよって
うん…………
千鶴さん
すぐには完成できないから、完成するめどがつくまではここに滞在させてもらうということと、この子が神様を作ったように私も神様を持っている。作ったわけではないがその辺はご了承してもらいたいって。そして最後に”私たちを信じることができますか?”と
はい
千鶴さん
ご両親が”息子がこれだけ初対面の人になついている。信じない理由がない”っていってくれて、先生も子供さんもその場ですごくいい笑顔で。私もちょっと泣きそうになったんですが、まずは呪法のほうを片付けることに集中してきました。本当に子供さんがやったのかって思うくらいにしっかりとしてて。ただ、足りないものとかがあったから完成しなかったんだろうなって。それでどうやってこれを作ったのか聞いたら近所のお兄さんが見せてくれる本でわかる部分を作ってたらしくて。なかなかの才能があるからなんじゃないかなって思ったりもしました。呪具も手作りで完成度も高くて。私が片付けてる間にうちの神様がヤモリの家みたいになる虫かごを器用に枝で作ってましたね。で、先生は私が作ったことにしてそれにヤモリをいれてお子さんに渡してました
犬猫みたいな感じの友達なんですかね?
千鶴さん
神様の家を作る時にいつもそこにいたんですって。それでおなかすいてるかもしれないって畑から果物や野菜をちょっと持ってきて葉っぱのお皿に並べてたんです。でも、この葉っぱのお皿に木の枝のお箸ってたしかにお供物の形式になってるんですよ。だからヤモリも儀式に参加してる感じになってきたんじゃないかなって思いました。色んなものがいいタイミングで重なってしまって神様が生まれかけていたって感じですね
なるほど……
神様の再構築
神様をもう一度作り直すってのはどうするんですか?
千鶴さん
詳しくは言えませんけども、ちゃんとした入れ物を作ってそこに魂を入れる感じですね。ヤモリがその役目をしようと思ってるのでちょっとお子さんが泣いちゃわないかなって思ったんですよ
ですよね。それ凄く心配
千鶴さん
先生どうするんだろうって思いましたね。でも子供さんを泣かせることはしないんじゃないかなって思いました。すでに子供さんとも打ち解けてましたし、子供さんもヤモリの入ったかごをもって先生の神様と一生懸命話をしてましたし。神様が見えるっていうのはもう才能なんですけれどもね
ふつう見えないものが見えるのはすごいですよね
千鶴さん
先生も、才能があるから将来的にそっちの道に進めるのもいいと思うって話をしてましたね。で、連れてきた家の人が私にこれを集めて来いってものを伝えてきたので、山とか河原から指示されたものを探しに行くことにしました。それで家の人も着いてきてくれて、あれこれ話をしながら材料を集めてました。先生があんな風なことをしたのは本当に久々だから何かを考えてるんだろうって。霊能者としては本当に凄腕なので子供でも外法とかを使う場合には容赦ないのはわたしも何度も見てるんですよ。でも今回は本当にやさしいというか
なんと
千鶴さん
なので、材料を持って先生の所に行ったらなんか光るものを持ってて。聞いたらヤモリの鱗だっていうんです。これを媒体にして神様を作るって。それで何で今回は子供さんの希望を叶えるのかを聞いたんです。そしたら”子供を泣かせるのは大人じゃない。この気持ちは本物だから答えようと考えた。この子には才能がある。呪法や下外法ではなく、ちゃんとした成功体験があればいい方向に向かう霊能者になれる。そのための道しるべにこの神様は今後もなってくれるだろうし、何か悩んだときはこの子の支えになるって
今後の道しるべ、凄くいい言葉ですね
千鶴さん
私をこうして育ててくださってるのも含めて先生は後進を育てる時がありますから、それなんだろうなって思いました。なんか、私が先生のところに来た時も言葉もおぼつかないのに手をかけてくれたんですよね。今でこそ冗談も少し言い合えるようにはなりましたが敬語が取れることはないですね。それくらい大きな存在ですし
千鶴さんの先生ってクール系だと思ってるけども、何処か優しいというかあったかいというか。厳しい人だけどもその分暖かさが深いというか
千鶴さん
ですねえ。先生が私に最後の弟子って言いますけどもきっとあの子が次ので死なんだろうって思いましたもん
神様ってどれくらいで完成するんですか?
千鶴さん
材料がそろって月の位置と時間がそろえばいいんですが、ネックは月の位置ですね。月がなかなか合わない所だと厳しいです。月の位置は日本で言うところの三日月とかそういうやつです。その位置が幸いにして数日後だったので、自然界で作られた真円とかいろんなものは使いますけども割とサクサクと行けた感じですね
なるほど……そうやって作るんですね
千鶴さん
ただ、作る人の能力で大きく左右されます。なので悪い目的で作れば悪いものができますからね。基本的には悪い目的のために神様って作ることが多くて今回みたいに毎日お母さんのためにお祈りしたいからとかが珍しいんですよ
私も浄化されそうです
千鶴さん
先生が”このヤモリは月光を吸ってきた。今後もあの子の良き友人になる。簡単に命を奪う必要はない”っていうんですよ。それでその鱗にヤモリの体液を少しだけつけてあとは自然に育つのを待てばいいという、子供さんの成長速度に合わせて神様も育っていく形になったんです。ヤモリは子供さんとこれからも過ごせる感じになりました
何ていい話だ……
千鶴さん
で、いろんなものをやって神様の入れ物もできてあとは時間と子供さんの成長に任せることになって、帰る日を決めて少しのんびりすごしました。お父さんが先生とあれこれ話してて先生が”ああそうだった、私たちは神様退治に来たんだった。依頼は確かそうでしたよね?どうしますか?”って(笑)
先生完全に芝居だ(笑)
千鶴さん
で、お父さんが”この状態だとキャンセルしたい”といったら”じゃあ残念だが請求もできないな”って。農村部で依頼代金をねんしゅつするのは豪農でも結構大変だとおもうんですよ。まして奥さんが病気だったら。それを聞いた瞬間にお父さんが号泣して。”私は依頼を遂行した際には料金をもらうが今回はキャンセルだ。いい休暇にもなった。なによりも久々に純粋な気持ちに触れることができた。十分な対価ですよ”って先生が言うんですよ。それで最終日はお父さんと先生がお酒飲んでたんですが多分先生、自分が持ってきたうちの神様をちょっと見せたのか見えるようにしたんでしょうね。お父さんが今後の話をききながらまた泣いてる声が着こましたし
対価は子供さんの気持ちと休暇ですか。なかなか言えないなあ……私だったら無理かもしれない。器の大きさですねえ
千鶴さん
でも帰りもあの馬車に揺られて腰骨が超痛くなりました(笑)
こっちに来たときに美味しいお店見つけたのでつれてくからがんばって(笑)
千鶴さん
帰ってきてから先生に本当に良かったのかを聞いたんですけども、今回は例外のの例外であって、バカみたいな相談持ってくる奴がほとんどだからそっちで帳尻は合わせるからいい。何かあったらこいつがやれって脅したっていえばいい、ってうちの神様を刺して笑ってましたね。でも帰りはすごい沢山野菜とかもらってしまって。でもこっちに持っては帰れないので途中でなんというか、ホームレス的な人に配ってきました。食材を無駄にするのは私たちはあまり好きではないので……
今回はなんかほっとする話で私も安心してしまいました。ここのところ凄惨な話や救いようのない話をきいていたので……
千鶴さん
私もこんな風なのは本当に初めてに近かったですよ。先生も帰宅してからしばらく期限もよかったですし。で、綺麗な鱗がもう一枚家にあって聞いたら”ヤモリかあの対価だ”っていうんですよ。ヤモリが友達のために自分の体の一部を対価にした。先生が一言”このヤモリ、月光をため込んでるからこれで十分な対価になってる。これ以上をもらえば私はあの子をしっかり育てなければいけなくなる”と。こういう自然界から生まれる道具の元ってすごく貴重なんですよね。私は加工法がわかりませんけども先生とかなら簡単に何かに作り替えちゃうので。材料を探すのもすごく大変なんですよ
なんだかんだと安心できる話でよかったです
千鶴さん
ですねえ。こっちも今地震だなんだであんまりいい話がなくて。なので私もちょっとそんな話をしたかったのはあります。
帰国はする予定ですか?
千鶴さん
もう少し落ち着いてからですね。こっちはあんまり影響はないですが気持ちの分で地震って疲れてしまうので
でも本当にいい話をきけて安心しました。先生はそれから変わらずお元気で?
千鶴さん
最近はあまり松潤がテレビに出ないので花より男子を見返してますね。松潤は顔が良いってずっと言ってます(笑)
先生に松潤グッズを何か準備したいですね
千鶴さん
あとは最近なにわ男子が気になるらしいです
先生結構アイドルすきよね
千鶴さん
好きですね。除霊とかで汚いものをみるから綺麗なものをみておきたいとかは、よくいってます。あとは字幕つきの日本の映画とかも見てますね。この間はテルマエ・ロマエみてました。本当にこの顔で日本人なんだろうかって言ってましたね
先生もたまに普通の感じになるんですね
千鶴さん
気が向くと鉢植えのトマトとか育てたりもしますよ。ただ、先生が植物を育てると大きくなりすぎたり、なんとなく霊力が入ってしまうので先生も”プチトマトというのはこんなに大きくなっただろうか”とか言ってますけども
なんかすごくご利益のありそうなトマトですね(笑)
千鶴さん
何もないときはそんな風に過ごしてますよ。ひどい話や酷い依頼が確かに多いので、本当にほっとすることがあるとうのはなんかこう…霊能者ってこういうこともできるんだなって。ちょっと色んな考え方ができましたね
今日は本当にいいお話をありがとうございました。またいろいろと聞かせてもらえるとすごくうれしいです
千鶴さん
夏くらいには一度帰国する予定ではいます。まだ決定ではないですがその時になんだかんだお願いすると思うので
お役に立てればいいんですが
千鶴さん
またその時はよろしくお願いします