目次
僧侶とは何かを考えさせられた 災害現場で勇気のある女性たち
向こうでは救助と供養を中心にしてた感じ?
恵美さん
それもあるけども看護師さんの荷物を移動させたり、トラックが持ってきた物資を運んだりもしてたよ。看護師さんが一番苦労してた。車に積んでた包帯と傷薬とかあったから渡したらすごく感謝されて……んで、ほかの僧侶や神主で車に積んでる人は○○の小屋にいる看護師さんに運んでってなって
うんうん
恵美さん
で、こっちのドラッグストアは結構無事だったから看護師さんが役場の人にドラッグストアで購入できるもので今欲しいものを書いて渡してて
渡してて
恵美さん
で役場の人がそれの予算を急遽、ねん出してくれて親父とか移動ができる人が何人か往復しながら購入して救護用に持っていったりしてたよ。福島に通じる道がすべて封鎖されてたからそれ以外のルートで購入できるようにしないとだめだから岩手行ったり山形行ったりしてもらって。で、ああいうところに来る人って赤い十字のあれなんだけども本来はそういう物資を受け取らずに病院本体からくるのを待たなきゃいけないんだよ
ほええええええええ
恵美さん
でも、いま必要なものであり患者さんを一人でも救護するのが私らの役目です。ってそこにきてた師長さんなのかなあ、私が責任を持つので購入をお願いします!!今ここに必要な患者がいて東京からの支援は絶望的です!!って
すごい方だ
恵美さん
病院なんか待ってるよりも今動いてもらえるならお願いすべき。我々は何のためにここにいる。ここは死を待つ家じゃない、一人でも救うためだって
すげえな……そこでその判断出して責任はとるって
恵美さん
あとで話をきいたら御巣鷹山の事故に若いときに参加した方だった。あそこでなにもできなかった。なら今この判断して自分一人の責任で多くの命が救われるならそれでいい。もうじき定年ですから私が背負いますよって
何それ惚れちゃう
恵美さん
本来はダメなんだけども裁縫用の針と糸で傷ぬってる人もいたからね。鳶のお兄ちゃんが腕ばっくりきれてて。とりあえずぬっておけばだいじょうぶくね?とかいって自分で縫っててな。んで看護師さんに消毒だけしてもらってた
傷とかは残っても回復は確かに早いし、その場での判断だったらそうなるかもしれなねえ
恵美さん
とにかく生きること、なんとかできるものは、なんとかしようって頑張ってもなどんどん亡くなっていくんだよ。で今度は私らが供養させていただくことが多くなっていったんだ
……つらい話だ……うん……
霊感ある人が僧侶になると、読経中に話しかけられる
恵美さん
で、お経あげさせてもらってると家族の方がね、まさかこんな時なのにお坊様が来てくださるとは思わなかったって言うのよ。なので、本当にご供養も最低限になっちゃうんだけども、それでも追いつかないの。一家族30分時間が取れればよかったくらいだねえ……で、私に話しかけてくる仏様が多くてね
うん
恵美さん
読経中断するわけにはいかないから、ばーちゃんがその声をご家族に伝えて。ご家族が少しでもなんというかね、気持ちの方向が変わってくれたらとかあったね……その時に見える、聞こえる私たちの存在は必要なのかもしれないって思った。それは私だけじゃなく他の僧侶や神職の方も同じでね。ご家族の方が泣きながらお礼をいってくるんだよ。私らができることなんてすごく少ない。でもその少ないことが今とても必要とされているって
うん
恵美さん
ご家族皆さんが亡くなってしまって、お母さんが娘さん探してるのもあったよ
それは霊的な?
恵美さん
そう。だから袈裟も着てるし私が僧侶なのはわかってもらえると思ってお母さんと一緒に合間に子供さんを探して。で、子供さんは猫を探してたらしくて猫をみつけてご両親と猫と一緒に上にいきますっていうから上にあげて
猫だけ置いていくのはできないからね
恵美さん
動物霊だと生きてるのかそうじゃないのか途中でわからくなったのもあったねえ。でも犬とかも結構見つけることができたからご家族に引き渡したら流されたと思ってたって避難所の近くに連れて行ったり無事だった車のなかに避難させてたりしてたね
東日本大震災でペットや家畜の受け入れができない問題とかがでてきてその後に、避難所でも犬猫をはじめペットを受け入れられるスペースや家畜とかもほかの近県の牧場とかに避難させるなども整備されたらしいね
恵美さん
犬めっちゃ可愛くてね。生きててもそうでなくても犬かわいかった
恵美さんもぶれないな
僧侶の女性と看護師の女性 意気投合しラインの交換
恵美さん
でさ、どうしても救えない場合があって看護師さんが落ち込んでて。その隣で“すごく良くしてもらったから気に病まないで。最後にすごく優しくしてもらえた。一人じゃなかった。家族と一緒にいきますから”って言っててさ。んでそれを看護師さんにこういう見た目の人が~って伝えたら泣き出してな……でもやっぱ人って強くなるんだろうね。伝えるたびに泣かなくなってたよ。その看護師さん今でもラインやりとりしてるよ
当時ラインなかったでしょ
恵美さん
うん。アドレス交換してさ。ほんでラインできたときにラインも交換した。あと今の師長さんがこれ。もう定年なさったんだけども東京オリンピックの時に病院で熱中症とかの対処で呼ばれてたらしい
見るからにバリバリしたお母さんって感じだ
恵美さん
うんむ。ばーちゃんが亡くなった時にも来てくださってな。本当にいいご縁をつないでもらったというか
今度こっち来たら観光果樹園親戚のところ案内するか?
恵美さん
それお願いしようかなあ。コロナ収まったら少しで歩きたいけど、医療に携わるものとして病原菌をほかにまき散らしたくないって言ってるし
プロだねえ
恵美さん
あの判断力はすごかったよ。今は保護猫二匹育ててるって言ってた。東日本大震災で行き場のなくなった犬猫をみて、わざわざ後日こっちまで保護猫をひきとりますってきてたもん
本当に人ができている
僧侶の服装:袈裟を着て現地を走る そんな彼女が嫌いな人とは?
恵美さん
で、救護とかはその人が周辺も含めてまとめてたのはある。統率が取れる人ってすごく大事なんだよね。で、そうやって僧職や神職は慰霊や供養の方を中心にやっていってその間に今度は民間や個人での救助隊の人が来てくれるようになってだいぶ流れはできてたかな。でも福島ってあちこちからの、ハブでもあるからそこが封鎖されてるというのはすごく大変なんだよね。東京からストレートに被災地には行けないっていうのがすごく大きくて。もちろん福島の人も大変なんだけども輸送ルートが分断されてしまってるのはすごく痛かった。なので現地に来れる人っていうのもかなり限られてきてて
道路とかも結構がたがたしてたもんねえ
恵美さん
うん。12年たったけども岩手のほうとかで、まだ交通や線路で手を付けられてないところもあるからね
線路とか鉄道って直すのすごく大変みたいだよね
恵美さん
うん。それだけ広範囲での被害だったのもある。ただあの時は本当に僧侶も看護師さんも足りな過ぎて
うん
恵美さん
で、隣の地区や町には僧侶がいないってなって僧侶の移動とかも始まって。で読経をしてもらった家族の人が隣町もよろしくお願いしますって言ってるのを結構見たよ。私はそのまま最初の区域に残ったんだけども体力がありそうな僧職は移動していった感じではある。本当に葬儀とかじゃなく簡単な読経中心になってしまうんだけども
町のほとんどの人が被害にあったとかもあったからねえ……
恵美さん
それで僧侶を他から持ってくるにもどうしたらいいとかは出てきたんだけども近県から僧侶の援軍が今度は来れるようになってきたり、被害のなかった町までもっていけば火葬して埋葬までできるかもしれないとかその場で決まってく感じだったねえ。マニュアルなんて無いし、あったとしてもイレギュラー対応すぎるからどうにもならないし。その場で考えて最適解を各自が出してくのが大事だった。避難所にいたのは数日であとは近県の親類の所に避難させてもらってという人もいた
卒業式終わってから引っ越したって人も多かったよね
恵美さん
移動できる人もいればできない人もいたからね。この街で最後まで暮らしたいって人なんかもたくさんいた
過疎地区とかも多かったからね……ここで最後まで暮らしたいって人もいたよね
恵美さん
うん。悲しいこともたくさんあったけどもその中でも人はどうにかして前に行こうとしてたよね。どっかの家でヤギが飼われてたらしくてでも飼い主さんはもうみつからなくて。災害救助のボランティアの兄ちゃんにすごくなついてて、ヤギも連れて帰っていた。あのヤギはきっとあの兄ちゃんの所で幸せに暮らしてる……
ヤギ……
恵美さん
ヤギかってるひとってまれにいるからね。割と被災した犬猫やインコとかはボランティアの人が引き取ってたな。私はさすがに無理だったけども、インコを虫かごにいれて一緒に帰ってる人もいた。人だけじゃなく被災って動物にもあったからねえ。ばーちゃんも“あっちに犬がいた”って町の人に伝えて飼い主と引き合わせたのもいっぱいあったよ。ばーちゃんも犬に好かれる方だからね
確かに動物全般に好かれてたよね、おばあさま
恵美さん
生き物全般に好かれるよね。途中から私らも結構汚れた袈裟で走り回ってから町の人や役場の人がお風呂とか洗濯できるときに袈裟とか洗ってくれて
僧侶って希少種だからね
恵美さん
あの匂いは忘れられないなあ……できれば生きてる間に同じ現場にはいかないでいたいくらいには厳しかった。ただ、そうなったら多分行くしかないんだろうし。人の命、尊厳っていうものを考えることになったしまだまだ勉強不足だなって思ったわ
本当にあんな広範囲での被害で、地球規模の地震で驚いたし今でも11日付近になるとなんでか、そこそこでかい揺れが来るのが嫌だよねえ
恵美さん
あの地震に関してさ、あれは人間に対する地球の警鐘だとか言う人もいるけども私はその考えは嫌いだなって思う
恵美さんが嫌って断言するのは珍しいね
恵美さん
未来視や千里眼の人でも読めなかった地震がそんな警告なわけがない。増えすぎた人口がどうたらとか人工地震とか、あの光景みたら無理だよ。安全な所にいた人の考えだね。私はそう人は好きじゃないし、ばーちゃんみたいにできた人でもないから、助けない気はする。まあばーちゃんも帰ってきてからそういう陰謀論とか言ってる人には“バカを極めてる”っていってたけども
葬儀って人の尊厳だとしみじみ思うよね。今起きてる戦争とかを見ても
恵美さん
特に火葬ができるようになってからはご家族もだいぶ変わってきてくれたのはあったね。なので簡易でお棺の前で葬儀を行わせていただいて、火葬場までトラックやワゴン車で運んでたからね
すごいことになってる…………
恵美さん
帰りときに役場の人から葬儀代を渡されそうになったけどもガソリン代だけもらって断ったよ
ガソリン代だけ?
恵美さん
それも本当はいらなかったんだけどもさ。完全無償で僧侶を使ったとかだと気持ちが嫌かなって。ボランティアでいいと思ったんだけども、そこを考えてばーちゃんがガソリン代だけくれ。あとは仏さんの花代にしてくれんか。酒を飲みたい仏さんもいるじゃろ。その人らに使ってくれんか私の代わりにって言ってた
スマートだ
恵美さん
どうせまたちょこちょこくることになるからガソリン代だけでいいってね。こっち返ってきてから風呂にじっくり入れることの素晴らしさと匂いが取れた時にようやくひと段落したって感じはした。本当に取れなくてね。死臭って通常のご遺体でもないわけではないんだけどもあの寒さの中であれだけの匂いは夏だったらもっと大変なことになってたと思うわ
確かにすごい寒かったから初期の活動の際には良かったってはいうね。ただ6月くらいから匂いが大変だったっては聞いた
恵美さん
そのくらいにも行ったけどたしかにすごかったな
いったんだ
僧侶の意味を噛みしめる 被災地に何度も出向く女性副住職
恵美さん
うんむ。どうやってもそうやって近隣というか近県からこれる僧侶ってすくなくてな。葬儀ってなると僧侶に払う金額が一番かかるから実質金額負担のない僧侶となるとあの当時に活動してた連中になるからね。私もだけどもほかの人も来てて、入れ替わりみたいな感じで引継ぎしてた感じはあるね。でもね、葬儀っていうのは残された家族にとっても一つの区切を作る儀式なんだよね。だからいかないわけにはね……んで見送る中に猫がいて、思わず猫飼ってましたか?っていったら地震で亡くなってしまってって言われて。今来てますから一緒に行くと思いますよって言ったらほっとした顔で泣かれてしまってね。んでもそうやって見えることで少し役に立てたんならよかったと思う
本当に、葬儀っていうのは尊厳だよね
恵美さん
うん。読経だけでもそこで僧侶がやれば最低限の葬儀になる。送り出すから今度は前に行かねばってなる事がおおい。その手伝いができたのはよかったと思う。今でも手紙やたまにお参りに来て下さる方はいるからね。もうばーちゃんも亡くなってますし、12年もたってますから大丈夫ですよっていってるんだけど
うん
恵美さん
お坊様方に会いたいのもありますのでたまに来させてくださいっていわれちゃうとね
だねえ
恵美さん
でまたそのうちに向こうに行くときにKちゃんも一緒に行かないか
時間あるときならいいよ。日帰りだったら
恵美さん
日帰りだね。本当に軽い確認とお参りくらいだから
あとは本当にあんな怖い地震こないといいねえ
恵美さん
だねえ。私ももうあんなに悲しい気持ちの人をたくさん見ることは遠慮したいよ。桜もきれいだし、海の近くの駅はすごくいい所だ。今度はたくさんの人がキレイな景色を見て心を寄せてくれることも鎮魂になるからね