執筆者:ゆい
哲君の実家らしきものを見つけたということで秋の連休を利用し、観光を兼ねて学生時代の恵美さんたちのいつものメンバーは、和歌山に二泊三日で向かうことになりました。
このページでは、恵美さんから聞いた話を構成しなおして、「哲君」のお話をお送りいたします。
あえて電車のたびにしてみんなでワイワイとしながら早朝に出発し、和歌山に到着しました。
その日の夜は、近隣の神社を巡ったり、哲君の本能に従って道を進んだりととても楽しい夜を過ごし哲君の実家のある街に翌日むかったそうです。
目次
霊感を通して見る哲君の家系の物語
和歌山はどうだったの?
恵美さん
みかんとかワインとかおいしかったねえ。あとお肉もお魚もおいしくていい場所だと思う。雪も降らないらしいし
天国かそこは!
恵美さん
台風がたまに来るらしい
雪とどっちがいいといわれたら悩むよねえ
恵美さん
悩むねえ。でもすごくいい場所だと思った。哲君が育ったといわれたら納得できる何かがある感じで
哲君の家はすぐに見つかったの?
恵美さん
うん。近くなるにつれて哲君も“ああ、ここだ!っていってる”んだよねえ。哲君はあの時代に大学に入れてもらえた家だけあって、すごく作りも立派だったよ。お庭もきれいで。哲君も“ああ、家だわ”っていうんだよ。事前にアポはとってたんだけども、私らがいくら哲君がここにいるといっても信じてくれるかはわからない部分だからね
うん
恵美さん
で、ご家族というか妹さんのお孫さんが対応してくれて。哲君も最初妹さんと思ったくらい似てるんだって。哲君はもうその時点で泣いてるし。涙もろいからねえ。そんでお孫さんていっても当時の私らよりも年上の方なんだけども、客間に通してくださって
うん
恵美さん
で、哲君の写真を見せてくれたのね。妹さん(祖母)はずっと自慢の兄で、無念の死だったと思うと。生前の哲君は医者になりたかったらしい。哲君からその分はすっかり抜けてたんだけども写真とか見ていくと白衣着てるんだよ。哲君は哲君のままで。ご家族の写真や妹さんの結婚式の写真とか見てるうちに哲君が号泣してて。お孫さんが“私は見えないのですが、きっとそこに祖母の兄がいるんでしょうね。その気配はわかります。私も〇家の女ですから”っていうんだよ
今時に珍しい人だねえ
恵美さん
いわゆる総領娘さんだねえ。それを聞いて哲君が自分がいなくなった後も妹さんは家を守って今までつなげてきたのを知ってねえ。私らもちょっともらい泣きしちゃってねえ
それはもらい泣きしちゃうよねえ。
恵美さん
で、アルバムにはいっぱい哲君の写真もあって。季節の催事をするたびに哲君の話をしてくれたから見たことはなくても身近な存在だったって。そうやって妹さんは哲君を風化させずにいた。きっとそれも哲君が長くとどまることのできた何かだと思うんだ
だねえ
恵美さん
何枚か哲君の写真をいただいてさ。哲君もすごくお孫さんを見ながら、似てるなぁ似てるなぁってずっと言ってるんだよ
うん
恵美さん
長谷川がさ、お兄さんというかなんというか……哲君は俺の大事な友達でいつも相談に乗ってもらってます。哲君は確かにもう亡くなってはいるけども、それは生きているか生きてないかの違いだと思ってます。超えてはいけない部分ではあるけれども、いつも俺たちと一緒に笑ったり泣いたり今もしてくれます、って
長谷川さん……
恵美さん
お仏壇に案内してもらって、哲君もすごく何とも言えない顔でご両親や妹さんの遺影を見てた。みんなどっか哲君に似てるからそういう顔の家なんだよ
君は本当にぶれないね
恵美さん
哲くんちはお墓も墓石というよりも石碑みたいな感じなんだよね。ただ、哲君のお骨はそこになくて。当時病気で亡くなった人はお骨からの感染を考えて本当に一部だけ入れたらしい。だから哲君も気持ちが薄れていたんだとは思う。そこに自分の何かがある程度あれば引き寄せられることもあるんだけどもね。それがないから思い出せない部分もあったんだと思う。その空白を埋めることが哲君は人と触れ合うことで、哲君がいつからそうやって見える人と普通に過ごしていたのかは誰も知らないんだよ
うん
恵美さん
だから何となくだけども、長谷川を待ってたんじゃないかなあって。哲君を理解して、感覚が似ていて、哲君を家まで連れて行ってくれる存在を
あー……そんな気はする
恵美さん
哲君にとって大事なものがある場所に私らも一緒に行くことができてよかったと思う。本当にいい場所でいいお家だった。すがすがしいっていうかね
独特のすがしさがあったのね
恵美さん
うん。だからこそいまだに総領娘が存在し、家を守るという考えがあるのが素敵だと思った。何かを守るというのは気持ちと芯が必要だからね
無事に対面できたのは本当に良かったねえ
哲君の記憶を取り戻す霊感とご縁
恵美さん
で、哲君の白衣とかはないんだけも哲君もその当時の事を少し思い出してて。医者になりたかったのも医者になると様々な補助とかが街にはいるからだったらしくね。昔から哲君はそのままで誰かのためになんかする人だったんだなぁって
哲君は何で亡くなったんだろ
恵美さん
当時の流行病だったみたい。ただ、そこはあまり思い出せないからきっと思いだしたくないんだよ。そういうのは無理に思い出さなくていいと思うし
だねえ。でもちゃんと対面もできて何らかの一つの区切りになったならそれが一番だと思うんだよね。私は見えないから何とも言えないけども、見える人達がいっぱいいて、それで哲君と哲君のご家族がちゃんと会うことができた、それが大事だと思う
恵美さん
うん。哲君も嬉しそうだったからね。結構長居させていただいて、帰り際に妹さんが使っていた櫛を渡していただいて
うん
恵美さん
その櫛は今、長谷川の嫁さんと娘さんが使ってる
いいねえ。きっと哲君も嬉しいねえ
恵美さん
家族の使っていた物はそれだけでも哲君には大事な物になるからね。市内にもう一泊してまた夜みんなで散策してた。で、一人だけ哲君の昔の友達がいたんだよ
ほう
恵美さん
そのお友達も守り神みたいな感じで家に止まってて。お前は本当に変わんねえなぁとかね。哲君も私らが知らない笑い方するんだよねえ。気の許せる存在はこういうのなんだろうなぁって。たぶん長谷川はそういう哲君を見てるけども私らはあんまり知らなかったと言うかね。そこで哲君も多分、うっすらと守り神とかに興味を思ったんだとは思う。生きてる人間にはできないことであり、一度そうなれば簡単にそこを離れることはできない。もしなれたとしても今度は自由は格段に減っていくからね
固定されるとなんでもそうだけども自由はなくなるのはわかる。神社とかもそうだけども移動とかはすごく大変だってきくよね
恵美さん
光る鹿に乗って移動する神様とかな
またすごい神様だな。鹿島神宮の
恵美さん
光る鹿なら私も乗ってみたい…!!
そんな鹿なら私だって乗ってみたいよ
恵美さん
なのでいつか哲君もそういう乗り物とか乗るんじゃないかと期待している
君は毎回何に期待をしているんだ
恵美さん
和歌山で色んなものが見えたというか作れた気はするんだ。でも、帰ってきてからも哲君は哲君だった。変わるものもあれば変わらないものもある。すごく大事だよねえ。生きていても決断って難しいことが多いのに哲君は生きてないのに決断をしていった。どれだけ大変なことか
そういう事ができるのも嬉しいよねえ
恵美さん
自由を捨てるってのは結構でかいことだと思うからね。まして今まで哲君は自由だったからねえ
翌日は何かしてきたの?
恵美さん
翌日も散策してきたよ。哲君が案内してくれて、あちこちを回ってきた。回りながら“こんなんやったんやなあ……”って言うくらいに色んな事を忘れてたみたいなんだよね。故郷の記憶が消えるくらいにきっと無念だったんだろう。それを思い出せるくらいの時間を重ねたからやっと前に行けたんじゃないかなぁ。生前の哲君の事は誰も知らないからさ
語らない部分なんだろうね。いまなら長谷川さんが知ってるとかあるのかね?
恵美さん
哲君が思い出せる部分はたぶん聞いてるんだろうけどもあいつもそういうのを口外するほうじゃないからね。もしかしたら娘さんが一番聞いてるかもしれないし
可能性はあるねえ
思い出したくない事は無理に思い出さなくていい。
これはとても大事なことだと思います。
そして、忘れないでいることが故人にとっても大事なことであることも。
霊視で明かされる哲君の心と和歌山での善行
和歌山から帰ってからは何か変化はあったの?
恵美さん
たまに哲君が白衣着てたくらいかな
服装とかも変わるのね
恵美さん
うん。流行の服とかも好きだから誰かが雑誌見てると哲君がその本の服を着てたりもあるよ。周りも“おしゃれすぎだな”とかいってたし
おしゃれさんだねえ
恵美さん
そうやって自分ができなかったことを追体験できるまでに哲君は霊的なものとしての能力をつけていったんだと思う。それをあくまで外じゃなく自分に使ってたから何にもならずに。外に使ってたら悪いものか地縛とかになっていた気はする。それだけ生きているものと生きてないものっていうのは違うから
そこのボーダーは絶対に曲げてはいけないって恵美さんずっといってるよね
恵美さん
どれだけいいと思ってもそこは違うからね。ただ、哲君はその時からこのままよりも、どうなりたいかは考えてたと思うんだ
そんな気はするねえ
恵美さん
本当に何がどう転ぶかなんてわからないんだよね
だよねえ
恵美さん
生きてる私らは色んな事ができるけども、生きてない場合は様々な手順が必要になる。こちらに関与したければそれなりに強くならなければいけない。もちろん、いきていない間に積んでいる徳だって必要になる。誰もが簡単に守り神や土地神などになれることは無い。そこに至るまでは資質だって必要だからね。私が僧侶になったような感じの手順だねえ
大学行って資格とって副住職になって
恵美さん
うん。すぐにすぽーんってなれるのは生きてるうちからハードに修行するとかね。即身仏とかあれはそういう段階をすべてすっ飛ばしていくくらいのものだし、誰かのための贄とか人身御供、神嫁ぎなんかもそう。いっきにすっとばせるだけのハードなものに分類される。どれも全部自分のすべてを誰かの為に使うことだからね
いわれるとすごく納得できるねえ
恵美さん
哲君はその中で自分がどうしたいじゃなくずっとみんなの話を聞いたり、相談に乗ったりしてた。哲君は意識してないけどもそう言うものがある程度蓄積されてるんだと思う
相談に乗ったり話を聞いてくれるだけで嬉しい人には哲君はありがたいよね
恵美さん
哲君は“大変やったなぁ、俺死んでるけどもその大変さキツイと思うわ”とか言うんだよ。必ず聞いてたからね。だから誰も哲君を祓ったりしなかったんだと思う。もともとそういう人だったんだろうけども、自分の気持ちは出さずにずっと聞いててくれるというのが嬉しかったんだろうねみんな
本当に歴代の学生の相談相手だよね
恵美さん
教員にも見えたり祓える人はいるんだけども普通に話しててね。哲君の分のコーヒーとかもあって見える側からすれば二人が談笑してるようにしか見えないのよ。その時の時事ネタだったり政治の話だったり、たまに宗教学だったり。だから、卒業前に長谷川が哲君を一緒に連れて行くってなった時にびっくりしてたけども“そうか、哲にも今度は家が新しくできるな。長谷川はぼんやりしてるから哲がしっかりせんとな”って言われてて
そっか、哲君は今まで家とかそういものがない状態だったんだよね
恵美さん
長谷川のアパートには住んでたけども、卒業後に一緒に移動するとは思ってなかったんじゃないかな。普通はそこまで親身にはならないだろうし
だねえ。普通に暮らしてても学生時代にそこまでのいい関係の二人とかって本当に少ないでしょ
恵美さん
そして今に至るのだ
んでも、そこからいい方向に行けるのはすごいと思う。そのランクアップとかって結構大変だと思うし
恵美さん
長谷川がこれといって善行をやってるか徳を積んでるとかは無いからな
言い切った
恵美さん
ただ、長谷川はの悪口とか言わない奴だからね。そういうところは善行なのかもしれない
私はそういう部分で善行は積めないなあ……
霊視が語る哲君の修行と神格化、その後の歩み
恵美さん
Kちゃんは最初に人を信じるからね。人を信じてそれでだめなら仕方ないって考えてる。まず人を最初から否定しない。それもすごく珍しい人だと思う。大体はみんな人を最初に疑うし信じない。だからKちゃんの周りには面白い人がよってくる
うーん、信じてほしいならまず相手を信じないとダメだろうし
恵美さん
うん。まず仏に帰依するなら仏を信じ、委ねて、すがる。そこだからね
そうなのか
恵美さん
だいたいどの宗派も基本はそこのはず
まさかのちゃんとした御仏の話だった
恵美さん
そういう何も気にせずにできる部分で哲君と長谷川はあってる部分があったんだと思う。地元帰ってからも二人一緒に長谷川のとーちゃんに鍛えられてたみたいだし
目に見えるようだ……
恵美さん
意外とやる事がいっぱいあるから二人で支えあってたんじゃないかなあ。修行って言うのも積もうと思ってやるものじゃなく日常でやれることをしっかりとやるっていうか
だと、二人一緒にいればそれが自動的にできる感じなのかな
恵美さん
生きてないひとに丁寧に接する。これだけでも修行になる
なんでも修行になるのはすごいことだと思う
恵美さん
哲君はその後に守り神になるためにもしっかりと修業は積んでたんだけどもね
それも聞きたい部分です
恵美さん
うん
大学で一緒に授業受けてるとかいいよね
恵美さん
興味ない授業のときは哲君はいなかったからね。あちこち見たりしてた
ああいう場合ってどこまで移動できるの?
恵美さん
哲君が長距離の移動をする時は基本的に長谷川とセットだったからね。長谷川に憑りつくというか、依り代にして移動してた
ふむ
恵美さん
聞いたことがあるけども、この町を中心にすると近隣の一駅かバスで少し腫れた所までは行けるらしい。なので、もともと哲君は私らとは違う大学の生徒なんだけども何かのきっかけでうちの学校の近くまで来て、それで拠点にしてた感じなのかあ。その拠点を長谷川のアパートにしたけども、そこも徒歩でこれるくらいだったからね
今の哲君は移動できない感じ?
恵美さん
長谷川には祓うとかそう言うのがないから、なにか霊障とかある時は哲君がついていって哲君が全部やってるらしい。神様だからそこは多分できてる。長谷川も“じゅって音がしてなんか焦げ臭いんだよ”っていうから結構、祓ってる感じだねえ
それはもしかしてなんだけどもさ、哲君が神格化してるからそれ以下に触れることで消滅してるだけなのではないのだろうか?一般的な霊的な存在って多分神様よりも格上ってないでしょ?
恵美さん
多分そんな気はする。神様もランクがあるから哲君でできるものは限られてるかもしれないけどもそれでも神格ってのはそれだけで価値が違う
だよねえ。会社でいうところの会長クラスだよね
恵美さん
やばい案件とかは来ないだろうし、そういう守り神のいる所はあまり変なのも寄ってこなくなる。他県からの帰省とかで持ってきて、お盆のあれこれやるついでに、“じゅって”やってるんじゃないのかな
恵美さんもお参りについでにやってるでしょ
恵美さん
やってる。できるものとかは一緒に片付けると時間短縮にもなるからね
見える人が多めの大学だったの?
恵美さん
そうでもないかなあ。ただ、家を継ぐって部分で来る方が多いからね。よそから迎え入れることもあるけどもできるなら息子や娘に継承させていきたいッてのがほとんどだと思う
その辺はあんまり、良くわからないんだよねえ
恵美さん
いつの間にか哲君がいて、いるのが当たり前みたいになってたからね。それで、教員に聞いたら自分が生徒の時からたまに見てたからとは言ってたから
それだけ長年いた哲君が離れて何か変化はなかったんだろうか学校
恵美さん
それは多分大丈夫かなあ。教員だって資格は持ってるから。ああいう資格だけでもお守りみたいなもんだよ。普通に授業うけとると思うよ
専門の大学ってのは不思議な事が多いんだねえ
恵美さん
土地的にまずいのはKちゃんの学校の方だねえ。あの場所病院だったのと今でもそんなに光が入らない作りだから
そういう透視をするのはやめるんだ
恵美さん
ただ、生徒がいうような怪談は存在しないよ。土地的にあんまりよくない程度
そのへんはまた改めてお願いします
恵美さん
はい