目次
動物霊「蛇」との対話、長谷川家が築いた霊体との信頼関係
長谷川さんはそれからどうしたの?
恵美さん
滝行が終わったAさんの顔から蕁麻疹が消えたらしくて。毎日続けたら傷とかも消える可能性は高くなるけどもどうしても滝行はAさんの負担が大きくなるから様子を見ながらやることにしたみたい
たしかに厳しそう
恵美さん
で、しばらく長谷川家にいることになったんだけども
はい
恵美さん
どうも憑いてるのは人だけじゃなくて蛇のほうもあったらしくて。蛇ってなると哲君の出番になるから長丁場だなってその時に長谷川も考えたらしい
蛇ってやっぱり長いんです?なんか長いイメージはあるけども
恵美さん
蛇の念って強いものが多いのと、蛇そのものの大きさやどれくらいの年齢かとかも 関係してくるかな。ざっくりとした私の感想だと”めんどくさい”になる
めんどくさい
恵美さん
説得するのも大変な種族ではある。ただ、こちらの話を全く効かないとかもないからそこはどういう風に持っていくかになるんだとは思う
とても難しい種族という受け止め方でいい感じです?
恵美さん
それでいいかな。で、長谷川的にも同じ考えだったらしく、まずは蛇のほうを説得しようということを考えたらしい。Aさんが寝た後にお供物を準備してまずは蛇らしく物との交渉を少しやってみたらしい
はい
恵美さん
蛇的なものはやっぱり蛇ではあったんだけども、蛇として扱うよりも神格持ちまではいかないけれども精霊的な立ち位置として扱う感じにしたみたい
精霊
恵美さん
こう、妖怪と神様の間くらいのイメージで。神様まではいかないけどもそういう力を手にするくらいには長く生きて、霊穴とかそういう場所の近くに住んでいて霊的な力も手に入れたって感じかな。それが精霊かって言われたら微妙には違うんだろうけども。羽が生えててかわいいとかじゃなく単純な動物からの妖怪化ではなくそれよりは、わりと人間にも好意的に動いてくれる感じというか
なんとなくはわかる。魔物ではないけども、完全に善性だけではない。でもこちらとの対話を断ることや無下にすることも少ないって存在?
恵美さん
そんな感じかな。最初にお供物を出したことでその蛇みたいのは長谷川と哲君とちゃんと話をしてくれて
そこはやっぱりセットだよね
恵美さん
うん。哲君は確かに神格は持ってるけども人間からのステップアップなのもあるし、まだ年月も浅いからそういう精霊側に近い部分もある。形が人かどうかというのもあるけども長谷川家に哲君がいることでその蛇みたいのは敵視はしなかったらしい。ただいきなり滝にぶちこまれて寒さや水の流れで、苦しかったことや驚いたことは言われて。それに対して長谷川も急を要したことを伝えて無礼をしたとちゃんと頭を下げてる
長谷川さん大人だ
恵美さん
その辺の判断の速さはすごいと思う。蛇みたいのもそれで長谷川を下に見るということはしなくてこちらに対しても礼を尽くそうとしていると受け取ったみたいだし
うん
恵美さん
蛇みたいなものの主張としてはAさんの中にいたというよりもAさんがへびみたいのを呼び出したから憑いていたというか。なんていうんだろう……降霊術のまねごとをしたら呼び出せてしまったという感じだったみたいで。そこまでAさんに執着はなかったのもあってAさんから離れることを了承してくれたらしくて
割といいほうの蛇さんだったんだねえ
恵美さん
それもあるけども長谷川と哲君はとにかく親身になる。私にはあそこまで寄り添う心はまだまだ足りない。それでその蛇みたいのを卵みたいな石の中にいれることにしたんだけども
石?
恵美さん
うん。卵みたいな形の石なんだけどもシーグラスみたいに自然の水流で削られてつくられたものだから石そのものにいろんな力が入ってるんだ。その中に入ってもらって自然界にまた戻そうかと提案したら
したら
恵美さん
その石の中に入るのは構わないし、石に入ったまま長谷川家に残るほうでもいいって提案されたらしい
残るとどうなるの?
恵美さん
この場合の残るっていうのは守る側の存在として長谷川家に存在することになる。まだ年月が浅いけれども娘さんが大人になるあたりならそれなりの強さを持つようになるし、哲君の眷属になる可能性も出てくる。本来そういうものは力でねじ伏せて契約するとかが一般的なんだけども、長谷川の優しさというか器の大きさ、礼儀のとり方に蛇側が多分惚れたんだろうと思う。こいつなら助けてやろう、こいつの血を引くものなら守ってやろう、そういう気持ちにさせたんだと思う。実際にこの形の妖怪や神格もち、精霊とかは長年にわたってその家を守ってくれる。加えて長谷川家には哲君もいるからお互いにいい方向に向かっていく可能性がすごく高いんだよね
長谷川さんすげえ
恵美さん
ね。すごいよね。思いがけない申し出で長谷川がまた丁寧にお礼をいったら”そういう人間もいるんだな”って笑われたらしい。哲君からも自分がなぜこうなっているのかとかも話をして、今安全のために奥さんと娘さんは離れたところにいることとかも伝えたら安全が確保されるまでは女は近づけないほうが良い。Aさんの体の中には刺や卵があるっていわれて長谷川が倒れかけたらしい
蛇の霊障と除霊の試練
私も一瞬理解が飛んだんだけども
恵美さん
いろんなものがもう体内にあるってことなんだろうけどもAさんがどうやってあれを呼び出したとかは些細なものになってきたなあとは思ったわ。卵は排出できても刺ってなると全部取るのがすごく大変なわけで
うーん、何で刺なんだろ
恵美さん
自分の所有物として抜けないように刺だったんじゃないのかな。これで一応3対1の構図にはなってきたから長谷川家が有利かなっては思うんだけども
人間の考えも難しいのに人間以外ってさらに難しいなあって思ってます
恵美さん
それは常に思う。誰かの気持ちを完全に図ることなんてできるのはお釈迦様とかそういう存在になるんだろうって
長谷川さんもある意味、菩薩見たいな感じはするね
恵美さん
長谷川は何というかそういう感じは昔からあった
Aさんから蛇が離れて、今はなんかよくわからないのが付いている
恵美さん
それでもねえ刺とかあると除霊は厳しいんだよ。そこまで行くとあきらめてもらうしかないというか。ただこれは長谷川とも話したんだけどもAさんが自分に憑いているものに対して、部分的に自分の理想を混ぜてしまってるというか。最初は中二病だったとしてもそこにAさんの考える素敵な異形みたいなものが加わってしまってAさんが簡単に拒否できてないという状態でもある。どこか愛着を感じてというか、もしかしたら中身はとてもかっこいい存在なのかもしれないってのが1グラムくらいあるというか……
殴ろうか
恵美さん
そういうのがあると、なかなか思う様にいかないというかね。本来は完結できることもできなくなる。除霊するにも自分が生み出してしまったものは除霊ってものじゃどうにもならないんだ。自分で生み出したものだけならいいけどもそこに本物が融合してしまった。今のAさんは下手したら化け物を生み出す存在になりかけてる
それはとんでもねえ……
恵美さん
定期的にいるんだけどもね。そうやって魔物を生み出してしまう存在になる人って。生み出す方に行くか増幅させるほうにいくか。どっちにしてもAさんをなんとかしなきゃいけないというかね。どうにもならない気はするんだけども
なんとも言えないよねえ。そこまで特別な自分って大事なものかね
恵美さん
世の中にはいろんな人がいるからな。気合で彼の世の人と結婚したり。亡くなった伴侶の為に残りの人生を一人で過ごすのもある意味あちらの人と縁を強めたままになる。それがいいとも悪いとも私らは言えないから。あちらからどうしたらいいと言われたらいずれまた会えます。今世での思いはそのままでも構いませんが、あちらにいかせてあげましょうって。どっちかの思いが極端に強いと亡くなっても止まってしまうし、双方の思いがそれだとよりそういうのが出てくる。だから亡くなってから一周ごとに供養をして七週間、四十九日がある。四と九で死と九ではなく七日法要を七回で七七日(しじゅうくにち)であって、その期間はずっと思っても構わない。でも七週間が過ぎたならばお互いにゆっくり日常に戻りましょうという感覚というかね。そう簡単に割り切れないものではあるけども私らはそういう気持ちでいる。それでもまだ気持ちが残るから百箇日とかもあるわけだし。でもそこが期限というか区分よね
亡くなってるとそうなるよね
恵美さん
今回はAさんが生きてるのにそういうものを作り出してしまってるからね。私の手からは離れたから長谷川にすべて任せてしまうことにはなるけれども
恵美さんが悪いわけではないとはおもう
恵美さん
仮にそうだとしても私が除霊できなかったという結果は変わらんよ。霊的なものからすれば結論が中心になる。あとは見守るしかなかったし
難儀な職業だよね
恵美さん
僧侶なんて得することはないよ基本的に(笑)
除霊の後に待つ不確かな未来
Aさんはどうなったんですか?
恵美さん
Aさんは蛇を外した後に一回実家に帰ったんだけども。そこで今度は内臓とかのほうに腫瘍が見つかったって言われて除霊とかの前に一度検査入院とかが必要になってしまって
あららら
恵美さん
そのあとは私も聞いてないんだよねえ
どうなったんだろうね
恵美さん
なんかね、結末が見えないってすごく嫌なんだよね。私はAさんが無事ならそれでいいけどもなんか無事じゃない気もするし
ほかにも恵美さんが除霊できなかったってある?
恵美さん
あるよ。いっぱいある。そこまで私は上手に事を運べない。まだまだ未熟だと思うよ。わけのわからない喧嘩の売られ方したら買ってしまうし、そういうときは容赦なく消滅させるし
恵美さん割と武闘派なところはあるよね
恵美さん
しかたないのだ
除霊できないのもだけども、負に墜ちないことは多いよね霊的な事案って
恵美さん
それはあるねえ。Aさんの話を持ってきた方もその後のAさんのことを聞いてもお母さまは”娘は嫁に行きました”って言われたらしくて
すごく気になるよね
恵美さん
うん。あの状態で結婚は正直難しい。でもお嫁に行ったってのはどうなんだろう?って。それは長谷川にも伝えてるんだ。あと、長谷川家でも奥さんと娘さんが帰ってきたんだけども娘さんが”変な臭いがする”ってしばらく言ってたらしい。ちなみに蛇との関係は良好でパズルブックとかで一緒に遊んであるらしい
娘さんが着々とわくわく妖怪ランドの住人になってきてるのでは
恵美さん
そういえば昔、先輩も除霊できない話が合ったわ
そっちも気になる
恵美さん
先輩から直接聞いたほうがいいと思うけども、通話繋ぐか
この時間に井上さんお手すきなんだろうか
除霊の限界?海外で儀式に巻き込まれたAさん
お久しぶりですKです
恵美さん
先輩お久しぶりです
井上さん
おお、どうかしたの?何かありましたか?
恵美さん
いま、霊能者が除霊できない話をKちゃんが聞きたいっていってて。長谷川に回した後味の悪い話というか結末を知らない話をしてたんですけども
井上さん
ああ、あれ!!あれね、多分もうだめ
恵美さん
聞いてるんです?
井上さん
聞いてるというかなんというか、あの人はもう人が手を出せない所にいったし今多分海外にいるよ。ちょっと国の名前は言えないけども、とても高い金額で家の人は交渉持ちかけられて海外に行ったんじゃないかな
どういうことですか?
井上さん
俺もはっきりとしたことを聞いたわけじゃなくて日本人の子が儀式に使われるためにやってきたって話があってね。ちょっと興味があって調べたってやつ
わあああ
井上さん
しかもその子 多分、化け物の子供妊娠してるんじゃなかったかな?そうなってくると何もできないし、もう人に戻るにも厳しいからねえ。生まれてくるものを見て耐えられるかってなると家族がまずやられてしまう
井上さんは何か非合法な組織にお友達でもいらっしゃるんですか?
井上さん
いないよ(笑)でも海外で行方不明なんて日本人だけじゃなくどこの国でも毎日起きてるわけだし。それに邪教が絡んでるとかはよくある話だよ
恵美さん
よくある話だったのか……
井上さん
そんなものを祓うとかは俺だって無理だよ。そう落ち込まんでもいいし
恵美さん
予想外の結末が来てしまった……
除霊の限界を超えた先に待つ邪教
ね……
井上さん
まあ、自分で化け物を生み出すサイクルを作ってしまった時点で人はやめてるんだよ。嫁に行ったのは考えようによっては神に嫁いだともいえるし。ただ……儀式に使われて無事だとは思わないし、親も手放さずに寺に入れるかを選ばねえのはっては、思ったけども。考えてもどうにもならないことは多いけどさ
ですねえ……運よくこう、人には戻れないものですか?
井上さん
ないだろうねえ。道が違えばこっち側の人間になった可能性はあるけども
?
井上さん
レアケースであるんだけどもね、親が悪魔を下ろそうとして子供を媒体にして半端に合体した結果、子供も悪魔も自我を持ったままになって折り合いをつけながら霊媒師になってるやつもいる。本当に局地的な魔物バスターみたいな存在になってるけども腕は確かなんだよ。そういう道もあったけども本人が多分、そっち側を選んだんだろう。自分で選んだ運命ならはそれはもう仕方ないって思うしかない
なんとも後味の悪いお話になってしまった
井上さん
アフリカなんかにもすごい少数だけどもとんでもない邪教とかあるんだよ。そういう所に行ったらもう消息もつかめない。新聞やネットニュースにならないだけ、いいとした方がいいくらいかもしれない
恵美さん
とんでもない結末だったね
井上さん今何してるんですか?
井上さん
今から相談者が来るから時間調整してた所だよ。だからちょうどよかったのと、話もできて俺はよかったけども
恵美さん
改めてまた連絡はします
井上さん
了解
とんでもない結末だったね
恵美さん
まさかのね。結婚しましたってとんでもねえ隠語だよな
本当に恐ろしい話だった
恵美さん
まあ、うん。そういうどうにもならなことは、やっぱりあるよね。わたしが未熟なのもあるけども精進しないと
今日は本当にいろいろとありがとうございました
恵美さん
ほんとうにびっくりしたね。また今度どっか行こうね