嘘で霊能者を名乗ったら……霊的なものと入れ替わった母親のその後

以前にさ、私でも完全に消しきれないから交渉して中身が入れ替わったの覚えてる？

そうそう。その人たちと先日あったのよ。こっちに用事があったからよければ夜ご飯でもどうですかって誘っていただいて

そう。私が払うよりも交渉してお互いの一番いい妥協点に行った方がいいと思ったような存在ね。で、中身もねえ……育ってたわね。確実に大きくなってたけども

元の人格、本来の母親もまだ消えずに戦ってるのも見えたから相当根性があるわねえ……育ったのは娘さんとかのいいエネルギーを吸ってるのと旦那さんとの関係を持つことで色んなものを吸収出来てるんでしょうね。私たちとは違うところから栄養が取れるし、人間の生活を覚えながら色々としてるみたいよ。出張に家族でついて行ったり、娘さんも今のお母さんのほうが好き。怖くないって言ってくるしねえ。今のお母さんのほうが本当はずっとずっと怖いんだけどもねえ……

そうなのよね。あの中身も好奇心があるらしく、母性というものを持ってはいないけども考えたり装ったりはできるらしいのよ。なので中身が何であれ、あの家族にとっては今のお母さんは前のお母さんとは全然違って優しいし、娘さんも一緒にお菓子を作ったり公園に行ったりできて楽しいみたいなのよね。体が欲しい理由の一つが様々なものを知りたいっていうのもあっただけに、そういうもの含めてあらゆるものに対してアンテナがすごいのよ。特に人間関係って、どろどろしたものや暗いものが多いじゃない

そういうドロドロした部分とかもすごくあれにとっては楽しいものらしく、人は汚らわしく禍々しい。自分たちと何が違うのだろうか？それでいて気まぐれに誰かに施すものもいれば、見返りも対価も求めずに施すものもいる。人はとても面白い。こんな面白いものをこんなに近くで、息遣いまで体験できる。その中に自分がいる。なんとなんと楽しいことなのか。って言ってきたわよ

とにかく娘さんの成長が興味深いし、すこし力を入れたら死んでしまう。命の決定権を握られているのになぜこんなにもすべてをゆだねてくるのか。人間はこんなにも面白い。この成長をずっと見ていられる。やはり女を選んでよかった。ってね。今の考えとしては子供を産んでみたい。自分の分身や分裂で生み出すものではなく血肉が体内でどのように育つのか、そしてどのように産み落とさるのかが気になって仕方ないって言ってたわね。たぶんそのうち子供産むわよ

それも言い切れないのよね。霊的なものがはいってるから霊的な能力や特殊なものは体内で血液を介して送られていくだろうし、それがもし、無いとしても純粋な人間として生まれてくるのか。それもあれにとっては興味深いことなんでしょうね

そういうことよ。ほぼ確定で何かが出ると思う。どんなふうに出るかはわからないけども興味が主体にとっては今の環境は最高だと思うわよ。体が欲しいっていうのは自分で行動ができるからってやつだったみたいだからねえ。その体の耐久度があるうち、つまりは一応の寿命よね。その間はご家族には何もしない。母親としての役目や義務なども果たしていくというのが交渉条件だったからね。あまりいい言い方ではないけども人外のものや、闇に溶けてるものや、何者かわからないものよりも、ひどい人間ていうのは存在するのよね……残念だけども

そうねえ……まあ、もともとの母親だった存在と比べて今のあれが成り代わってしまった方が、娘さんも旦那さんも、転勤先の人も、すごく受けて入れてくれるし、多少分からないような行動しても旦那さんが“不慣れな土地でして緊張してます”とかサポートするのよね。旦那さんにはあれがなになのか、男性なのか女性なのかもわからないし性別すらもこだわらない生き物になっていることも伝えてるのよ

なんというか、薄々何かが家の中に入るのはわかっていたけどもそれが奥さんの体から出てきているまではわからなかった。奥さんの体にはいろんなものが入ってきたけども最も強いあれがすべてを食らっていき融合した。その結果あれの自我は確立して思考回路も動くようになり、時折奥さんの意識が一番薄いときや睡眠中に入れ替わって近所を散策したり、生肉とかを食べたりもしてらしいのよ。でも旦那さんはそういったものに興味はないし、夢遊病や精神的なものだと思っていたというのが実際の所だったわね。私の所に相談に来たというか、話が回ってきた時もまず旦那さんに霊的なものがどんなものなのかを説明する所からだったし

ただ、旦那さんから見ても本当に人が変わったように優しいときがあってその時の奥さんがずっと続けばいいというのはあったのよ。娘さんと本を見ながらお菓子を作って焦がしたりしながら二人で笑っている。そんな当たり前の光景が欲しかったって。あれが入れ替わってる間に好奇心でお菓子を作って失敗した。次はもっとうまくやろうという考えを持つようになった。それだけの行動でも元の奥さんが逸脱した性格だったから人が変わってもいい、という結論が出るまでは早かったわよ

あれと対話もしたみたいよ。人や小動物を食べない。危害を加えないなら人が違っても構わないって

気にしてしまったらそれはやっぱりつらい結果になってしまうかもしれないもの。あえてわからないことを選ぶのも大事な時ってあるじゃない

怪しい商売や霊感商法、霊的なものが家の中をうろつくよりもあれが主人格になれば大抵の霊的なものは逃げていくわよ。あれにとっては餌に過ぎないから

それでもね、どれだけ強くても入れ物を手に入れるっていうのはすごく難しいのよ。だからこそ交渉ができたのはあるわよ。あっちの最大の希望である入れ物をやるからこっちの希望も聞き入れろっていうやつね。やりあってもよかったんだけども、やりあったところでまたあの娘さんが悲しい目に合うのならばッていうのが私にもあったのがね……あれは人間ではない。でもあれのほうが人間のお母さんよりも娘さんを幸せにできる。とても難しい問題ではあるわよね

そこを重視しちゃうのよ。うちの孫とも同じ年だし母親が優しいほうがいいだろうって。ほかの理由はないわねえ……本当に特殊だと思うわ。旦那さんにもこの手のものは約束は守る。よほどの危害を加えない限りはそこそこ安全に守ってくれることも多い。加えてこの手のもにしては知識も高い。考えることを楽しんでいるし、娘さんに対しても嫌な感情ではなく好奇心で接している。あとはあなたが受け入れられるかどうかになります。どれだけ表面がきれいになっても中身は人外です。化け物です。どこかでその面影が出ることが無いとは言えません。男なのか女なのかもわかりません。ただ、予想するに男性的な性格が強い面があります。そこには何もこだわりがないので女として演じろといえばあれは演じます。ただし、中身は化け物です。って再三再四言ったわね

でも、中身があれのほうが良かったみたいよ。あれも長年の願望がかなったからその契約は守るだろうし。それだけあの条件での体を手に入れるというのは器のないものには大事なことで貴重なのよ。もっと小さな入れ物、赤ちゃんとかが仮死状態か亡くなった瞬間に入り込むこともあるけれども行動できるようになるまでは時間がかかる。すでに体もできあがっていて自由もある程度あるというのは１％もないでしょうね

もともとの奥さんも相当に我の強い人っていうのもあるけども、あれも奥さんの記憶や知識をゆっくりと吸収してる。ずれが起きないように。あれもあれとしての感覚で娘さんに対する愛情というものを持ち始めてもいる。だからできるだけ娘さんが悲しくないように記憶を分析したりするために残している部分もあるんじゃないかしら

人が嫌がるような仕事や役員をやってくれる。時々不思議な行動があるけども天然な人なのね。でもとても周りのことを考えてくれる人ねって受け入れられてるみたいよ。役員なんて人間関係の面倒さでだれもやりたくない、仕事に影響が出るからしたくないっていうのをあれは“専業主婦なのでやらせてください。できるだけみなさんと早く仲良くしたいです。分からないことが多いのでそこは教えてください”って役員をやれという打診に答えたみたいよ

転勤先では天然でちょっとドジな所もあるけどもしっかりと仕事もしてくれるし、役員のまとめや保護者のまとめもしてくれるって評価みたいね。もっともあれは何かしようと考える人がいれば、あれ見つめられたらあれの意思のほうが勝ってしまうから……だから人ではないっていうのはすごく大変な部分になってしまうのよね……

それでも体は人間だから当然疲れは出るし、病気になってかかる。女性の体から生理だってあるし一般的な対応ができるまで表に出なかったみたいね。それでもあれの学習能力は高いから一巡するくらいで全部身に着けていったみたいだけども。娘さんが“ママ大丈夫？”っていうのに“ママ大丈夫から、〇ちゃんはあっちでパパと寝てようね”って答えるとかもできるようになってるのよ。旦那さんの仕事の愚痴を聞きながら“本調子になったら少し始末しようか？”とかいうくらいには生活はできてるみたいよ。旦那さんも中身が化け物だってわかってるからそういうものとして過ごしてる。あれも旦那さんに対しての感情は好意的であり、自分の器が傷みかけてるときはどうにかしてくれるって考えてるし

そうね。この先も時々化け物の片りんを見せるんでしょう。でも娘さんには見せない。それを強く感じるのよね

なんというかね。あれの吸収した存在の一つが子供さんだったんでしょうね。その子供が母親に対する気持ちや母親にもっと愛されたかったとかがあればそれを理解して自分の中に吸い込んだものに何かを与えてやりたいと考えているのかもしれないわね、あれは”子供はかわいい。とてもかわいい。大事にすべきものだし悲しい思いはさせないが”って言ってはきたわよ。なんというか、まあそういう人もいるわよねってくらいのずれがたまにはあるとしてもほかでカバーできるくらいにあれは周りをよく観察してる。娘さんをいじめるような男の子の目をじっと見つめて“そういうことはしちゃいけないよ”ってやるだけでいいのよ。あれはそれだけの力をもってる

あれが本体を見せるのはあの体が焼かれるときでしょうね。でもその時にはもう私はいないだろうし、そこまでの責任は私にはないわね。私はあくまで旦那さんの相談である”何とかしてほしい“に対しての結果は出したもの。旦那さんにはちゃんと必要な説目はした。アフターケアも十分だと思うわよ

そうね。ただ、娘さんは旦那さんのほうの家に預けてきたみたいだけども

旦那さんが“何かに憑かれていたらしく、そういう人のお願いしてからもどにどった。いや、前よりもずっとよくなってる”っていったみたいね。確かに人が違ったように穏やかになってるし、娘さんもおびえずになついてるし、すこし不思議な部分があっても憑りつかれていたで納得させることができる

完全に乗っ取られて人が違う上に人でもないんだけれどもね。それでも方々が幸せになる結果ではあるもの。犠牲はあったけども、結果に対しての効果を考えれば最小限の犠牲でもあるわね。ただ、私は本来のお母さんにも何度やめるべきことは進言したわ。それでも虚栄心とお金にくるってしまって娘さんのことも邪魔にした。あれはそれもしっかりと理解して私との交渉についたんだもの。普通の化け物とは知能が違うのはわかってたわ、今度はそれに感情や人の気持ちに対する何かが付随してきている。もちろんそれが好奇心であっても、自分の中に取り込んだ者たちの願いもかなえようとしている。人間ではないけれども人間の真似と人間ではできないようなこともするようになってきた

「私とあった時は一回目をぐるっと回転させて自分である照明をしてたわね

時々旦那さんにもやって驚かせるみたいね。娘さんには絶対にしない。いいお母さんをやってみたいっていうのが今は先行してるみたい。不便なところもある体だがそれも楽しめるから悪くはないって言ってたわね……

たらればにもならないかもしれないけども、男性だったら世間を動かす何かになっていたかもしれない。幼い子供だったら将来的に歴史に名を遺したかもしれない。でもそこまでも待てない。もう十分待った、今この体が欲しい。だからこそ、危ないことや世界に関与することではない方向に考えを向けているんじゃないかしら。でも私がいなくなってあの体も朽ちるとき、今度は男性の体を探しに行くかもしれないわね。でもどうかしらね、同じような霊的なパートナーを見つけて二人で入れ物を手にして今度こそ世界を動かせるようになろうと考えるかもしれない。満足してあの体と一緒に天に上るかもしれない。どっちにしても私はやるべきことはやったからただ、会いたいといわれたら会うくらいだわね

そういうものなのよ、取引って。いろんな話をしたわね。あちらに移ってからの幼稚園でちょっとおかしい母さんと思われたこととか、それを機転を利かせて何とかしてごまかしたこととか。あれも本気を出せば人間以上の身体能力は出せるけど体への負荷が大きすぎるから控えてるみたいね。娘さんが車にはねられそうになった時だけはそれを使ったみたいだけども。その時もうまくごまかしたっていってたわね。ああいうときって予想外のちからとかもでるからね。母は強いで通したみたいよ。今までよりも評判もいいし、旦那さんの会社の人からも好評な奥さんであれば旦那さんだってたまにあれの本性が出ても愛情をむけるようになるわよね。今度は少し思考や口調が女性よりになるくらいにはね

かまわないわよ