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ゆい 現役イタコの恵子さんには様々な依頼がやってきます。 それは時に県外などからも来ることがあり、可能な場合には現地に出張という形になります。 今回は「日本刀の鑑定」のお話をご紹介します。
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除霊のために岩手へ 奥州藤原氏と義経ゆかりの地へ 今回はあくまでドライバーとして往復の運転をしてほしい、宿泊先、食事の確保などの保証があったのでドライバーとして恵子さんを岩手まで運ぶことになりました。 荷物は恵子さんの神様の入った箱と、いくつかの道具で後部座席で十分なくらいでした。
数時間運転して岩手につき、恵子さんと相談者さんが顔合わせをするところから「荷物持ち」として参加させてもらうことになりました。 依頼者さんをAさんとさせていただきます。
〇〇さんから紹介を受けてきました恵子といいます。今回の案件をやらせていただくことになりました
はじめまして、県外の方にお願いするとは私も思ってなかったのですがよろしくおねがいします
はい。奥州での義経関連ということで購入したのですが源氏の紋もなければ装具もないので、もしかしたら違うのかもしれないと思いまして
義経関連ってほとんど国宝じゃないですかね?代表的なのが欧州までずっと帯刀してた薄緑とか。ある程度のしっかりとした出所のものってほぼ国宝指定な気がするんですが。それこそ、無銘であっても国宝指定で名前がついてるものもありますし
これ、義経じゃないと思うのよ。でも、まるっきり関連がないわけでもないっぽいのよ。触ってみてその辺はわかるんだけども、何分古すぎてね……もう少しこれについてる雑念みたいなのを落とせればいいんだけども刀って折れるんでしょ?
使い方間違えるとぽっきりというわけではないですが折れますね。なので使い方や刺すのか切るのかで使う刀もかわってくるそうですけども
Wi-Fi環境があれば少しはつめれると思います。ただ、今の状態だとこの刀がその種類なのかもはっきりしないし、紋も見えないのでちょっと即答は難しいかと
やっぱり連れてきて正解だったわね。ひとまず一晩預かりにしてみるわ
一晩でどこまで調べられるかはわからないですけどねえ
あたりをつけて行ってそこから恵子さんが透視する感じになると思います
そのあたりをつけてほしいのよ。ならAさんにそれを説明して預からせてもらうわね
除霊やお祓いに新時代に必需品 ネットモバイルで劇的調査 Aさんから一先ずは一晩預かりで刀を受け取り、その日の夜はAさんが準備してくださった旅館で過ごさせてもらうことになりました。 奥州藤原氏は義経をかばったことを理由に断絶させられた家系になりますが、金色堂をはじめ文化財も多く、当時の幕府のある鎌倉とも文化レベルの差はなかったことになります。 また、農業もですが刀産業などにも力を入れており、藤原氏の抱える刀匠などもおりその流派なども美術館などで確認することができます。
奥州は良質な玉鋼の産地でもあり、名刀も多く生まれました。 鎌倉時代の刀の基盤地区の一つでもあり、義経関連を外しても刀剣に纏わる話や関連施設は岩手はもちろんですが岩手に続く奥州街道にも点在しています。
たぶんなんですが、太刀ではあると思います。といいいますのもね、私、去年〇〇美術館に行ったんですが、その時に写真を結構とってきたんですよ
です。それで、ここに奥州藤原氏の刀匠の系譜があるんですが、ここからだと車で1時間ちょっとくらいで美術館には着きます
ですが、このスマホの中にその系譜とみてきた刀の写真が、有名無名関係なく入ってます
焼肉が食べたいです。冷麺が食べたいです。ビビンバが食べたいです。おなかがすきました
昼食に保証されていた焼き肉を頂き、スマホの中の美術館の写真を一気にプリントアウトしました。 筆者が訪問したのは去年の秋であり、このような事態になるとは全く思ってもいませんでした。
お待たせしました。これがコピーです。この中にたぶん近い形のがあると思うんですよ
そこから作った人を見付けて、その人が仕えた人を見付けていくのね?
ですね。ただ、これは私一人でやったほうが早そうなのでその間恵子さんも少しマッサージとか受けてきてもいいんじゃないかな、とも
集中して探してくれるのね。そこに誰かいると集中できないのもわかった。1時間ほどマッサージ受けてくるわ
恵子さん向けにマーカーで印をつけ、刀匠たちの年代を重ねていく作業は普段からも調べ物をしているので苦痛ではないことが幸いでした。 また、刀身ではなく装具、法具から時代を推定していくのも面白く、1時間でだいぶ知ることができたのと、自分でも楽しみながらできたことにも満足でした。
お待たせしました、たぶんこの人だと思います。この装具がほぼ一致してるので、時代は義経よりも後ですね。藤原氏が滅んだ形になって樋爪氏のものだと思います。多分4代じゃないですかね?ただこの辺は私も吾妻鏡でさらっとしか読んでないので何ともなんですが。大きさはメジャーで測った感じだと太刀です。なので、装具もこれで。なので、樋爪氏関連の刀じゃないかなーって推測されます
ネットさえあればモバイルパソコンが使えるんで、一応持ってきたんですがよかったです。んで、必要なものはこのUSBにいれてるんであとでこのままAさんにお渡しするのも可能ですよ。といっても、私がザクザクと調べたやつになっちゃいますけども
ここからだと片道45分くらいですね。館跡があります
除霊の仕方もチームワーク 活用するのはイタコネットワーク 目指したのは樋爪氏の館跡になる、五郎沼と薬師堂になります。 季節になれば奥州藤原氏から譲渡された古代蓮の咲く美しい場所です。 蓮の花は弔いや眠りに使うものであり、仏具にも存在していることを思えば意味の深いものになります。
この刀もその樋爪氏にあえばさ、何かが変わるんじゃないのかなって思うのよ。今だとかなり頑なで私でも意思が読めないのよね。古すぎるというのもあるけども、もう一つはこっちにその意思を見せたくないっていうのがすごく強いの
一回実家に戻ればそれはそれで何とかなるもんなんですかね?
こんだけ古いとこの刀自体が付喪神みたいなものになってるのよね。ざっくりと1000年に少し足りないくらいでしょ?
そうですね。これが本当に鎌倉のものだったらそれくらいになりますね
大体500年超えると神格に入るものが出てくるのよ。1000年とかだとどんなものでも大体何らかの神域に入るわね
中国なんかだと道具で1000年超えると、妖怪とか精霊になるみたいですからね
話が早くて助かるわ。この刀も何らかのそういうものだと思うのよ。だから、ぽっときた私に好き勝手にされたくないというものあると思う。そういう存在にこちらの誠意を見せるにはどうしたらいいと思う?
そうね。今の時代で元の持ち主の痕跡のある場所にこの刀が移動するのはとっても困難でしょうからね
予想よりずっと早くて助かるわ。どうやって調べたの?
画像取り込みと地元の関連の言葉でひたすら二台使って探していく感じでしたね。まあこういうのは好きなんでそこまで苦痛じゃなかったです。このあたりかなって想定はあったので
助っ人で地元のイタコの人にも夜来てもらうことにしたから
まあ、恵子さんは話を聞いてなくても読み込みますからね
私じゃなく陽子さんの知り合いね。陽子さんといまラインやってて、こっちのイタコさんが必要なら宿に行ってくれるように伝えるってあったから二つ返事でお願いしちゃった(笑)
あの人はすごく人当たりがいいじゃない?だからお友達も多いのよね
陽子さんは何というか自分の縁もしっかりと管理してるのよね。縁の質が違うというか
なるほど、着きました。私は何が食べてきますので、恵子さんにあとはお任せします
こればっかりは一人でやらないといけないものだからね。ゆっくりとおいしいもの食べてきて
刀剣などの取り扱いものですが、霊的なもので同行者に危害が及ぶ可能性がある場合には恵子さんはこのように単独で行動してくれます。 筆者のような霊的な耐性のない場合の同行者などがそれになります。
30分ほどして恵子さんに呼び出されました。
一応ね。あなたの調べた通りだったわ。それでこの刀は樋爪氏の持ち物だった。あとは今のその樋爪氏になんとか連絡を取れたらいいんだろうけども
漢字が変わって全国に散ってるみたいですね。私も食べながら樋爪舘のことを調べてたんですが。岩手には“ひづめ”という苗字は存在しないって書いてはありますね
なら、購入したAさんにそれを話し定期的にここに連れてきてもらうほうがいいかしらね?元の樋爪氏につながるものがないのならば
相当厳しいと思いますね。あとこの辺はおいしいものがたくさんですね
私は難しいことがわからないんですが、ここのお酒とかはその刀には使えませんかね?あとは古代蓮関係も少し売ってましたけども
ついでに私にもお酒を買ってください。運転するので飲めませんので。試飲もできるみたいですよ
除霊で焚くお香 古い日本刀から取り付くもの剥がしていく 恵子さんは一点集中型になる人なので、他の部分のサポートに筆者や陽子さんが入ることがあります。 今回は遠出なので筆者がドライバーという名目でそのサポートをすることになりました。
夕食を終えて、刀の除霊に入ることになりました。
恵子さん、たぶんお客さんが来たようなので迎えに行ってきますね
よろしくね。私はうちの神様の準備をするわ。神様には神様をぶつけるしかないから
はじめまして。陽子さんに紹介された美由紀といいます
よろしく。恵子です。こっちはドライバー兼助手のような……
美由紀さんはイタコさんですが、恵子さんよりもお若い方でした。先天性ではなく恵子さんと同じ後天性の霊能力を持った方であり、陽子さん同様に縁結びの力が強いそうです。
この刀を納得させて元の状態にして、今の持ち主に渡したいのよ
ですと、今の持ち主の方との縁を結べばいいですかね?
はい。ただ、できればこちらにいる間に私のほうの除霊を一件手伝ってほしいのですが
恵子さんの除霊は八角などを使ったものであり、今回はそれに持ち込んだ神様を使うものでした。 焚かれたお香の煙とおそらくは神様の出しているであろう霧のようなものが混ざり合い、不思議なにおいがしたのは確かです。 煙が室内を包み、10分ほどしてその煙がゆっくりと消えました。 恵子さんも少し疲れた顔をしていましたが、私が驚いたのは刀の鞘についていた飾り紐と装具がごっそりと風化して落下していたことでした。
通常、装具は簡単にほけないものであり年代物であっても落下するほどの風化を一瞬でするということはほぼありません。 砕けた装具からはカビのようなにおいがしており、恵子さんがそれを和紙に包んで片付けてました。
これが縛り付けてた物みたいでね。うちの神様がこの装具についてた神様をぺろっといってくれたというかね。で、そのおかげでこの刀に本来宿ってる神様が今度は表面に出てくることができたの
あとはAさんに明日説明をして、Aさんの家にあるAさんにちなんだ装具とかをつけてくれれば今後はAさんの家の守り刀になるんじゃないかな
美由紀さんが来てくれたからよ。私一人なら力業で終わらせる予定だったもの
明日は美由紀さんと除霊にいくから、あなたも今夜はちゃんと休むのよ
こちらも助かります。では、明日お迎えにあがりますので
除霊師が上手だから 日本刀はそのお宅の守り刀に!
翌日、宿にてAさんに刀を引き渡しAさんの家にちなんだ装具をつけるか、新しく装具を作り装着するかという話を提案し、Aさんも納得してくれました。
今回は刀本体が古く力を持っていたこと、刀と装具に別々の神仏が宿っていたことで起きたことなどを説明し、今後の取り扱いなどを話し合い無事に解決になりました。
義経由来のものではなかったものの、義経と全く無関係でもないというものであり刀そのものにある年代物の価値、守り刀として今後Aさんの家を守る力があることなどを恵子さんが伝えると本当に安どした表情を浮かべていました。
あれだけ古いものだと相当値が張ると思うのよね。宿代とかも彼方もちだったし今回
その辺はあえて聞かなかったんですがそうだったんですか?
でないとこの時期に県外にあなたを連れて向かうのは躊躇するわね
まあ、恵子さんがいる間は安全は保障されてるとは思ってますが、気管支が弱いものとしては宿泊での県外はこわいですからね
今回はすんなり終わって本当によかったわ。刀身のほうの神様がごねてたら最悪折れてた可能性もあるからねえ
神様が装具のほうを攻撃してたから、力業でいってもある程度大丈夫だったのよね。でも、鞘のほうには少し傷ができちゃったけども
鞘も一緒に作ってると思うので価値があると思いますよ。そういえば、あの時壊れた装具はどうしたんですか?
持ってかえって埋めるか、後で埋めるかのどっちかだわねえ……ものであれば土に還りたいんじゃないかなって
そうかもしれないですねえ……作った人の気持ちもたぶん入ってるんでしょうし
なんというか、刃物関連は大地に戻すのが正解なのかは悩むところではあるけれども
勉強になることが多いですね。でも毎回そうなりたいかといわれればそうではないですが
今回はね、本当にサポートが助かってるの。ありがとう
追加の焼肉と冷麺が希望です。私はおいしいものが食べれるのが嬉しいので
あなたの場合は本当にそういうので引き受けてくれるからありがたいのよね
そっちも手伝えるようになってくれるとありがたいけども嫌でしょ?
はい。私は怖い思いをするのはとても苦手なんです。見てるだけとかそこにいるだけとかならできますが、自分が何かをするというのはできるだけ避けたいです
一般の部で十分ですので。美由紀さんは迎えに来てくださるんですかね?そのあとをついて行けばいいんですかね?
海沿いだと魚がおいしいみたいですね。今見てましたけども
あくまでサポートしかできないですけどもね。帰りに美術館も寄ってみませんか?
そのまま帰っても来れるので、帰り道に組み込みますね
じゃあもう一仕事していきましょう。夜はまたここに泊るから