恵子さんは蔵のような場所に仕事などで引き取った呪物や仕事道具を保管しています。
効力の薄くなったものなどは身近に置いても危険度が少なく、誰かに悪影響を及ぼすなども少ないからということでした。
中には年代物の骨董などもあり好きな人であれば引き取りたいという人もいるかもしれません。
その中でも目立つのは紙ものです。古本や古書はもちろんですが掛け軸や一枚絵、中には和紙に書かれたままで装丁もされていないものなどもありました。
掛け軸などは、巻きなおして紐を結び、反物状態にして段ボールの中に入れていきます。
かつては呪物だったのものであっても祓われたあとは年代物の掛け軸になるだけと恵子さんは言いますがそれでもこれが呪われていたものだと考えるとなんとなく怖い感じにもなります。
言われた一角の掛け軸や絵画などを段ボールに入れた後に、張り紙をして、『要確認』と書いておきます。
私はこの類のものを一切欲しがらないというのを恵子さんもしっているので持ち帰ることを進めたりはしません。
反物や着物、組み紐などは愛子さんが持って帰り仕立て直したり、保管したりすることもあるようですが布物なども恵子さんからすれば不用品になります。
かつては血染めなどの話が合った着物や人骨を混ぜたとされるかんざしなども使用できない状態にされているのでぱっと見はただのゴミにしかならないものもたくさんあります。
それらのものも別枠でまとめていきますがこれは市の指定している燃えるごみの袋にいれていくので、何も知らない清掃員さんがゴミの日に持って行ってくれます。
たしかに何の影響もないといえばそれまでではありますがなんとなく引っ掛かりを感じるのも現実です。
恵子さんが引き取るもので多いのは圧倒的に骨董になります。
これはつぼや大皿などに相手の姿や自分の姿、霊的な存在の姿などを写して作ることで送られた相手への呪いをかけることに使うためのものになります。
これらの骨董も本来描かれていた部分の一部が消えていたりするので、見かけはアンバランスにもなっています。
真ん中に女幽霊があるとすればその部分がすっぽりと消えているといった感じです。
見せるためのメインの部分が消えているので飾っておくにも物足りないという部分が出てきてしまいます。
中には長年そのツボの中に閉じ込められた霊的な存在に悩まれた人が、解放された記念に引き取ったなどもあるようですが数年してやはりなんとかしたいといわれて恵子さんは一言「割って捨てて大丈夫」と返したなどの話もあります。
このように恵子さんの感覚では呪いがなくなった後は普通の処理をして問題がないというものとして分けられています。
逆にまだ年月が足りていないものや効力を弱めたけれどもまだ力を持っているものなどは2階に分けられており、他県の恵子さんのご友人がいた時などに何個が持っていくことがあるそうです。
二階に分けることでご家族やお孫さんなどが触れることがないようにおり、私も二階には入ったことはありません。基本的に危ない事はしたくないので二階には入らない事が希望であることも伝えています。
また恵子さんは肉体言語の除霊的なものも行うので、効果が薄れているものや効果や霊力を薄れさせたい呪物などを、現場に持ち込んでぶつけることもあります。
これは毒を持って毒を制すという考えかもしれません。
何度か繰り返すことでどんなに強いものであっても確実に削られていく、かつ自分の仕事もスムーズに進むので有効な手段の一つだと恵子さんはおっしゃいます。
この際にも二階から移動させて現場に持ち込む際も呪物をすっぽりと覆える箱などで囲み、運転中も恵子さんがしっかりと抱えていてくれることになります。
このような蔵のようなものはこのあたりの田舎では長く住んでいる人ならば割とメジャーなものであり、近隣を少し歩くだけでも発見することができます。
古道具の中には、まだまだ現役で使用されるものもあるので間違えて捨てないように確認を取りながらになります。
この確認作業を飛ばしてしまい降魔棒などを捨ててしまった手伝いの方なども過去にいたので、確認を取ることの多い自分が恵子さんの蔵掃除のバイトに雇われているのもあります。
その際にも安全な場所のみの掃除であることが条件ではありますが普段見たことのないようなものがるので、中国史や歴史な不度が好きであればそれなりに楽しめて目の保養などもできるという状態です。
これらの掃除は1日かけて行うことがほとんどなので午前中の早い時間から始めることになります。
なかには特定の時間に日に当てることで効果を発揮する銅鏡などもあるのでタイマーなど必須になります。
鏡などを拭く際には指定された布で拭くことで霊力などを入れやすくなるということもあり、手順などを書いたノートを恵子さんの蔵に置きっぱなしにしています。
何度か筆者の都合がつかない時にもそのノートを見ることでざっくりとした処理はできるようになっているので恵子さんからも重宝されている一冊です。
昼休憩食事の後には再度片付けに入ります。
まだ使う道具などはほこりを払って並べなおし不用品はざくざくと段ボールや木箱に詰めていきます。
燃えるゴミや燃やせないゴミに出しても問題のないものはゴミ袋に入れていきます。
恵子さんはそれらを指定の日に出すのですが中身がそれなりに価値のあるものに見えることや、生ごみなどが入っていないものだとわかると持ち帰る人もいるそうです。
一度捨てたはずの着物を着て歩いている人を見た時はぎょっとしたそうです。
その際にその着物自体はもう呪いなどはないものですが、そういったものは引き寄せやすいこともあったらしく燃えるゴミとして焼却を考えてのことだったそうです。
その後のその着物のの持ち主がどうなったのかに関しては筆者も聞いていませんが恵子さんも「捨てたものを持って行ったんだから自分で何とかすればいいじゃないかしら」の一言でした。
ゴミなどを持ち帰る人がいるというのはSNSなどで見たことはありますが実際に話で聞くと何とも言えない気持ちになるものです。
同様に瀬戸物なども燃やせないゴミで出した際に持ち帰った人がいたそうです。
ですが、しばらくしてから再度その一部が燃やせないごみとして出されていたらしく恵子さんも「察したというのはこういう時に使うのね」と笑っていました。
このようなこともないとは言えないので生ゴミが入っていないとしても他人が出したごみを持って帰るのはよくないと改めて思いました。
銅製のツボなども燃やせないゴミとして出しておくと誰かが持ち帰ることも多いらしく恵子さんも「ゴミだから別にいいけども何か起きても私のせいにはしないでほしいわねえ」と一言こぼしていました。
このようなこともあり、恵子さんの蔵は何度か窃盗が入っています。
その際にも二階は頑丈に施錠がしてあるのであきらめているので被害はないのですが一階にあるものなどを盗まれてしまい、何度か警察の人が来たなどもありました。
恵子さんの感覚としてはそこまで価値のないもの、捨てる準備に入っているものがほとんどなので被害届は特に出さずにいたそうです。
下手に被害届を出してまた戻ってきても邪魔になるということが理由も一つでもあるのですが、被害届をださなくてもどのみち犯人がもって謝りに来るか盗んだものは蔵の前に置かれているなどになるので最近では連絡もしなくなったようです。
呪遺物は解呪したとしても、もともとそういったものを入れやすいように作られています。
環境が変わることでまた同じように何らかの霊的なものを寄せやすくなったり、新しい呪物になろうとすることがないとは言えません。
そのために恵子さんは定期的に処分をしているということもあります。
恵子さんの蔵には様々なものがあります。
恵子さんが言うには「道具に呼ばれたり、そそのかされたりする人っているのよ」とのことでした。
片づけを終えた後は埃をしっかり払った後に除菌スプレーと消臭スプレーを降るまでがセットになっています。
においなどは特にはないのですがこの辺は気持ちの問題という部分が大きいです。