恵子さんは冥婚の除霊を受けることになり、再度私たちはAさんのお宅にお伺いすることになりました。
Aさんにもお話しておかなければいけないんですが、今回の冥婚は息子さんが生まれる前に取り付けられたものであり、Aさんに一切の非はありません。冥婚というものは基本的に死者との結婚になります。今回私の方で調べさせていただいた結果、異業種との冥婚という形が出てきました
ですね。なんというか、Bさんの家系に定期的に生まれてくるというか……Bさんはご存じですか?
心当たりがなかったんですよ。あの後に私どもも調べてみたんですがBさんという名前に、家の人は誰も心当たりがなく……
そちらの方も名字が珍しいので知っていれば記憶しているとは思うのですが誰も心当たりがなくて……
ほぼXさんが独断で動いてるんでしょうね。この人が出てこないのがあれなんですが
Xさんは遠縁の方だとは思うんですがほとんど面識がなくて
主人に聞いてみても心当たりがないので……なのでこちらとしても困っているというか
今回はAさんの家で納得してない部分があるのでそこで相手とまず対話してみようと思います。ただ、この場でどうこうというよりも私が一度話を持ち帰って場を作ってそこで異形と思われるものを呼んで対話をしようかと考えております
はい、お願いします……こちらが準備しておいた息子の毛髪になります。少し束にできるようには致しました。二人分です
はい。こちらお預かりいたしますね。ほかの事には一切使用しませんので安心してください
その、冥婚というものは、このままだったらどうなったんですか?
おそらくですが、視認できる事態なったら契約が成立してしまうかと思います。今の所は何かの縁で見えない状態になっていますが契約というものは大体そうなので。なのでXさんが間に入ったように私が間に入らせていただきます。今この場でどうこうというには時間がずれますし。おそらく夜間や夕方、昼間でもいいんですがそれには場を作らねばいけないので……
ただ、100%うまくいくとはいいがたいのでそこはご了承ください
その場合にはほかの方を私から改めてご紹介させていただきますので
恵子さんは息子さんの依り代として髪の毛を預かってきました。
深夜帯よりも昼間の方が安全だということで昼間にその何かとの対話を試みるということだったので見学させていただくことになりました。
霊的なものに効果があると結構聞くので車にも積んでます
恵子さんが息子さんの髪の毛を懐紙の上にのせて塩のようなものをかけてしばらくすると部屋の空気がじっとりとしたものになってきました。
Aさんのお宅の空気に近い匂いです。
恵子さんは淡々と相手と対話をしていきます。
相手はどうやら虫の一部が入っているらしく見た目が白い芋虫のようだということでした。
この時ほど見えなくてよかったと思ったことはありません。
大きさは50センチほどらしく、その幼虫は自分のつがいとしてAさんの子供が嫁いでくることを待っており幼虫のままでいたということでした。
でもあなた、人でも虫でもないでしょう。どうする気なの?しかもAさんの子供は男の子であって、あなたの子も卵も産むことができないわよ
幼虫の言い分としてはそれでも契約は契約であるということ。
B家は自分を生み出してしまった責任を取る必要があること。
冥婚が成立すればB家にかかっている災厄も、ほどけるはずということをつたえて来たそうです。
これでようやくわかったのはB家がZさんに、この理由からどこかに冥婚を受けてくれる相手がいないか、それもできれば生きているものでという相談をしたということです。
その話を聞いたXさんが当時妊娠中だった、Aさんが受けてくれるということをZさんに伝え、報酬をB家から受けとったということでした。
冥婚といえば基本的には死者や神様などがありますが虫の一部を取り入れた人間と虫の間のような存在というものはあまり聞いたことがありません。
ずっと待っていたのだから今更ほかは考えられない。
契約は契約だ。
Bさんの家に何の恨みがあるかわからいけども気が遠くなるほどの時間は過ぎてしまったし、上に上がりたいならそれなりに手助けはできますよ。少し考えてみはいけがでしょうかね?私はあくまで貴方の花嫁とされる側の代理人でありこの契約には、異しか持たない側になります。こちらは諦めてもらえるならば手助けはある程度しますし、希望も聞くだけは聞きます。完全に何をどうとかは言えませんが
恵子さんに示された場所に持っていた日本酒をかけていくと虫を焼いたようなにおいが広がり始めました。
姿は見えませんが何かがいるんだろうなという気持ちにさせる不快な、臭いです。
あまりの臭いに日本酒をまきおえてからファブリーズを振っていた時でした。
車の中にアースジェットもありますけどもってきますか?
恵子さんも殺虫剤を持ってきてその匂いが出る場所に二人でガンガンに振りまいていきます。
臭いは強くなりながらも無理やり抑えていく形になり、相手から悲鳴が上がったようです。
恵子さんが対話している隣で2本目の殺虫剤を遠慮なく振りまいていきます。
恵子さんも目で追加を促すので、ここぞとばかりに殺虫剤を巻いているとギブアップが出たようでした。
どうする?力ずくで消されるのと、こちらと交渉を持つのと
この場合の交渉はほぼ恵子さんが有利に動くことになります。
恵子さんの会話を聞きながらガンガン殺虫剤をまいていきます。
まあ、大体の希望は聞けたわね。で、私ちょっと箱取ってくるから戻るまでそこで追加まいててもらっていいかしら?
合計6本の殺虫剤をまき終えて恵子さんは桐箱のようなものに何かをしまうような動作をしました。
代替えになる相手がいればいい。Aさんの方はあきらめる方向に向かってるわね
見つからないわね。なので黒幕に責任取ってもらうしかないというか
一人だけうまい所を持って行ってる人を見つけて責任を取ってもらいましょ。それが等価ってものよ
私らじゃ見つけられないだろうから其れは自分で見つけてもらいましょ。あの虫に。そんでそのまま冥婚の契約を書き換えてもらいましょう
ものすごく納得はいきますが虫さんのほうは大丈夫ですかね?
Xさんがどんな人かはわからないけども本人ではないにしても家族や近い血筋から選ばれるでしょ。対価ってそういうものなのよ。Aさんは何も受け取ってないもの。Zさんもまあもらい事故でいいんじゃないかしら。Bさんからの報酬はXさんが持っている、じゃあ取り立てられるべきは?
そういうこと。ところでKちゃん、殺虫剤何本つかったの?
それだけかけられれば生身の虫を取り込んでるから効果出るでしょうね(笑)がっちり弱ってるからこっちも条件を出しやすいからねえ
それからまた少し時間をおいてから恵子さんに呼び出されたのでお宅にお邪魔いたしました
箱はまだ恵子さんの自宅にあり、中身もまだあるとのことでした。
ある程度の力の復元と引き換えにAさんへの契約をXさんに変えるのは成功したわよ。いまXさんの行方を追いかけているんじゃないかしら
この箱から出れるまでは回復させてないからね。でもXさんの行方を追いかけるくらいにはできる。半分というかまあ一部は元が人だからAさんは何も対価を受け取っていないことを理解させて納得させて本人の同意で契約先を変えたわよ。
Aさんの息子さんの髪をのせても反応しなくなったからXさんの方にちゃんと移動したわよ。あとは本人が意地を見せて捕獲してくれたら箱から出して花嫁のところの向かうんじゃないかしらね
あんな綺麗なものじゃないわねえ……本当におぞましい虫と人間の半融合みたいなものがでてくるんじゃないかしら。まあ私には関係ないというかそこからはXさんが自分で幕引きをしなきゃいけないのよ。XさんがそんなことをしたからBさんも疲れて、Aさんも私に対しての余計な出費が出るわけだし。この幼虫もそんな話が来なければBさんちでまだ待てただろうに
しばらく対話することで分かったんだけども、私最初は異形との子供だと思ってたのよね。でも実際には何というか近親婚の繰り返しでいわゆる蛭子のような子供が生まれてしまい、それをこうね……捨ててしまったのよ。その状態の子供に虫が入ってしまった。そのままそれは生きながらえてしまってああなってしまったというか。当時としては仕方なかったのかもしれないけれども……今のBさんのお家が悪いわけじゃない。本当に先祖のやったことが今降りかかっているというか。まあいろいろと考えてもねえ
ですね、悪いのはXさんですね。私の直電的な考えだとそうなりました
悪いのはXさんですよ。契約不履行で良いものは全部持って持ち逃げしてますよ。Xさんからしっかりともらいましょう。悪いのはXさんです
ありがとう(笑)だとね、これも誰を対象にすべきか改めてわかるからねえ
じゃあ、Xさんに全部おしつけたらこの箱も無くなるんですか?
箱は私の私物だけども燃やしちゃおうかと思うわね。なんか変な汁とかついてると嫌だし
仮にもそういう存在に変な汁とか言えるのが恵子さんだと思います
なのでAさんには一応の報告をいれてるわ。Xさんの所に行ったらそこで完了になるのでもう少しお待ちくださいって
XさんがなんでAさんをという疑問はあるけどもそこまで深追いしなくてもいいかと思ってるし。そこまで私がすることもないでしょう。BさんやXさんから何かの依頼が来たわけでもないし、Aさんは息子さんが無事であることが最優先事項なわけで。そこに“Xさんの無事”は入ってないのよ。入れなくてもいいし。自分の子供をかってに対価にされて余計な出費も心労もさせられて、それでその元凶を許せる人間なんてそんなにいないわよ
それは人以外も同じなのよ。契約を反故にされたらそれは怒りの対象になる。今回はXさんは人としてやっちゃいけないことを方々にやってしまったというのが正しいかもしれないわね。んでもまあね、人である部分と対話ができてよかったわ。でもねえ……
人間でもまあ抑えられない人ってのはいるけども、蟲は繁殖することに対しての執着がすごいのよ。命の危険を感じたらまず産卵や生殖をおこなう。そして今この虫は命の危機を少し超えたところである
その状態でようやく見つける伴侶というものはどうなるのかしらねえ……別に私はそこまで考えたわけではないし、あなたが殺虫剤が効果あるというのをみて単純に弱らせていく方法でやっただけだし。まあ、仕方ないわよね
難しいことは考えないことにしてます。今夜は天丼を買って帰るまでが1セットです
まあそんなに時間をかけなくてもこれも行くべきところに行くんじゃないからねえ
とってもきれいな表現ですが結果はとっても悲惨な気がします
Xさんがどこまで交渉できるかだとは思うわよ。もうAさんの方には何もできないし、関連するならBさんかZさんになる。もしくはほかの第三者で
冥婚相手を見つけてくるか……普通に亡者との冥婚の破棄も大変だけども亡者と虫の融合たいってなるともっと大変なのよ。人といっても本当に生まれて間もなく捨てられたから。ほとんど虫と思っていいんじゃないかしら。長年で知識や言語を得て人の口を使って対話ができるけれども基本的な思考は虫と本能に素直な子供だと考えるとねえ……どうなるのかしらねえ……私以外の霊能者に依頼してもらってなんとかしてもらったらいいんじゃないかしらねえ
その辺は触れずに置きますが、蟲も人も繁殖という部分だと悲惨な結果しかないなあという想像が……映画のザ・フライのハエ男みたいな感じなんですかねえ……スパイダーマンは絶対に違うし
どんな幕引きになるのかを見守るだけになるわね。やってしまったことへの幕引きはしっかりとしないといけない。それは人以外の存在に冥婚を持ち掛けたんだからそれなりの報いと請求はやってくる。今回は私がAさんの代理人で出たことであれの顔にもしっかりと泥がついた。人以外のものが人を吸収するとそのプライドは膨大になる
見守りましょうね。このお話がどうなるのか。私も何もする気はないし、そういう霊的なものに対して粗雑な扱いをする人には好感が持てないから