執筆者:ゆい冥婚。という言葉があります。これは若くして亡くなった未婚の方を同じく亡くなった方との婚儀を執り行い、結婚したという形を作ることになります。
ですが、亡くなった人とまだ生きている人での冥婚なども実際にはあり、これらは多くの場合にトラブルを起こします。
今回はこのトラブルについて、現役イタコの恵子さんにお話を伺ってきました。
よく聞く亡くなった方と生きてる方の冥婚だったんですか?
冥婚は台湾をはじめ、アジアでは古くからあるものになります。
中国などでは冥婚で位の高い家との関係を作るなども古来からありました。
日本ではなくなった人同士の冥婚などの手順として代理になる人形や絵馬などをつかった冥婚が多くあり、実際に存命の方との冥婚はごく少数になります。
この場合にも本家筋との関連を持ちたいなどの思惑で、存命の方の意思を無視したものが目立ちます。
まずね、生まれる前に冥婚で夫を決められてたのよ。でこの子をAさんとするわね
Aさんが生まれてから再度違う相手との冥婚をさせられたのね。つまり、冥婚が二重になってしまってるの。優先される、というのはおかしいけれども最初の冥婚を破断にして次の冥婚も破断にするべきなのよね
そうなのよ。実際にお伺いしたら夫二人がもう大ゲンカしてるの。夫二人とも姿形がおかしくなってたけれども、片方がもう酷くて原型がなくてねえ
そうなのよ。相当面倒な相手に対して、じゃあ嫁を与えるからお前はこの家に財をよこせみたいな話をしちゃったのよね。もちろんAさんはそんなこと知らないし、仮に冥婚を受ける考えをもったとしても、相手があれではちょっと難しいかなってくらいにひどかったのよ
完全な汚物ね。これを目の前にして夫婦になれっていうのは酷としか言えないわね。私ですら厳しいと思うのだから、霊能力とかない人は相当つらいわよ
でも、見えない人ならそこまで嫌悪感がないとかは……
見えるようにしてしっかりと夫婦としての生活を求めてくるのよ。隣にいるだけでもおぞましいのにね
もう一つもそこまではひどくなくともまあ、結婚するべき相手ではないのよね。どっちも人ではないものだからお嫁さんに対する要求も人間とは違ってくるものだからねえ
まあ前者はお嫁さんをやるからこの家を守れみたいなもので、後者は
いわゆる良いお家との縁を作りたくて政略結婚の冥婚版みたいな感じかしらね
田舎であればあるほどまだ本家とかを信仰する人がいるからね。本家筋とかそんなところに自分が入りたいという部分で、問題を抱えて亡くなった人のところに冥婚させてしまったのよ。これがまずAさんが生まれた後であり、Aさんが小学生の時なのよ。この時期なのもすごく問題があった
※特殊嗜好(とくしゅしこう) 特殊な性的嗜好
なるほど、詳しくは聞きませんが好みに合ってしまったということですね
死後の欲求にこれが出るくらいの大きさだったと考えるとぞっとするわね
でもね、私偶然なんだけどもこの時に後者の問題児にすごくいい相手の除霊を頼まれていたのよ。なので、そちらとの冥婚ができないかなってちょっと考えて
交渉まではいかないんだけども、幼くして亡くなってしまってね。まだこの世にとどまりたい気持ちが強いから一緒にいられる存在がいればいいかなあって思ってね。まあ、たまには交渉をしてもいいかなと思ったのもあるわねえ
霊同士の縁結びなんてまずしないし来ないけども、これはいいかなあって思ったのよ
問題児ねえ。すごく霊的にも強いし知恵も回る。だからこそ、こちらの交渉にも歩み寄るだけの能力あるのよ。女の子のほうは結婚とか冥婚とかではなく一緒にいることのできるお兄ちゃんやお父さん的な存在が欲しい。ならば条件だけなら一致できる部分が出てくる
女の子を一時的に移動させて対面させようかと思ったんだけども、現段階で見える姿がおぞましかったからまずそれを交渉することになるのよ
目次
霊的なものとの交渉
恵子さんは一般的な縁結びなどを行うことのできるイタコの一人になります。
その恵子さんが行う霊的なもの同士の縁結びと冥婚の破断。
あまりないお話ですが、非常に興味深く聞くことができました。
大正あたりの人らしい、しかわからなくてね。まずは話をするために話せる空間を作って向かったのよ。うちの土地神様も持ち込んで
これはもう一つの計画でもあったんだけども、ここで双方の願いをかなえれば前者の迷惑な汚物をたたくときにも協力を得られるかなあって
借りは返さないといけないからね。それを考えると悪くない勝負だと思ったのよ
でも、後者の問題児さんはともかくもう一人は幼い女の子なんですよね?
幼さなくてもその辺の霊能者では払えない程度の強さと長年とどまった事で能力も増えているの。長年とどまる事はそれだけでも強くなるからね。まして幼くして亡くなったことで未練が大きい
亡くなってるもの同士で、最初はぎこちないかもしれないけども確実に一緒に入れる相手がいるからどうだ?と。そしたら食いついてきたのよ
そう。お嫁さんはもちろんだけども一緒にいられるというのはすごく魅力的なものなのよね
まず見た目を好かれるようにすることが大事なことを伝えたのよ。人はもちろんだけどもほかの霊的なものと争い以外で会うことがなかったからね、後者の問題児は。まずは、霊的に相性のいい場所にまず連れていくことになったのよ。これが初日の話ね
で、1週間ごとに見に行ったんだけども2週間くらいでだいぶ元の姿に近くなってたのよ。つまりこっちの話をより聞くことができるわけ。見た目が悪化してると、耳とかもふさがってることが多いのよ。自分の腐ってしまった肉とかで
目つきは少しきついけれども、細面のいい男には見えたわね。ただ、性格がきつそうな部分と知識を多く持っている部分もわかる顔っていうのかしら。でも、大正時代のいわゆる書生スタイルっていうの?あれが似合う感じがしたのよ
私らだとハイカラさんが通るとか読んでたからね。あのイメージや宝塚の書生イメージでいいかなあっては思ったのよ
相手の女の子も明治くらいの子だからね。ちょっとハイカラなお兄さんというか、まあ霊的には女の子のほうが長いけども総合能力だとこの男性のほうが強かったから、年代や年齢ではなくその雰囲気とかで彼女の求めるお兄ちゃん、お父さんとしての条件に合致するかと思ったのよ。なので今度はその話をしたのよ
なんというかね、幼い子が好きなのかと思ったら自分の話を嫌がらずに聞いてくれる子が好きなのが強かったみたいでねえ……それで、こんな女の子で最初から冥婚ではなくまずは頼られる存在になるのはどうだ?って話をしたのね
そうしたら、この状態で相手に会えるなら会いたいっていうからこっそりならいいわよってなって連れて行ったのね、その女の子のいる場所に
で、彼は何を思ったのか女の子に話しかけたのよ。で、しばらく話し込んでいて戻ってきたら大泣きしてるのよ。あんなにかわいそうなのに一人になんてできない、と。今すぐでも一緒につれていきたいと。彼は随分と涙もろい体質だったみたいねえ。確かに、女の子はとても悲しい生い立ちでなくなった時も悲しい事件が原因だったのだけども
※詳細はあまり書きませんが
その女の子は口減らしのために奉公に行きその奉公先で酷い虐待を受けあまりの虐待に耐え切れず逃げ帰ろうとするが実家の手前で力尽きて亡くなったそうです
でも、連れて行ったところであの汚物が今度はその子も狙ってくる可能性が出てくるのよ。なので、今の状態の二人を受け入れてくれる場所を今度は探す必要がでてきたの!とどまる場所を見つければそれだけでも変わるからね
知り合いの退魔師のところに仮住まいさせてもらったの。離れが余ってるからそこを借りて、二人でままごとでもいいから一緒に過ごすことを提案したのよ
この女の子は別件で受けてたんだけども、この家から離すという部分に関しては可能だから私の依頼も終わったのね、この件は。で、二人で過ごすこと2週間
すっかりなついて、将来はお兄ちゃんのお嫁さんになる、っていうほどでね。だったら先の冥婚は破談にして新しくこの女の子との冥婚でいいなら私が絵馬や人形での婚儀を専門家に依頼するわよ?って話をしたの
二人ともそれでいい、という話だったのよね。で、人形での冥婚を行うことにしたんだけども、せっかくだから希望を聞いたのね。そしたら元のいた家の女の子を見てて、同じようなドレスが着たかったみたいなの
そしたら男性のほうがタキシードとかは各式やいろんなものがあるし恥ずかしいとか言い出したんだけども
最終的には女の子の希望をかなえたい方向があったから折れてそろえた人形での冥婚を行ったわ。退魔師さんに紹介してもらったからスムーズに進んだし、人形も生前の二人にだいぶ似せたものだったからね、結構したけども
よくわからないけども、5万とかするやつを二人分。まあこれは最初の冥婚先に払ってもらったからいいんだけども。それで、まず後者の問題児が青年に変化するまでに心も変わってきたのよね。で、害もないし、まだ現世にいたいならこの離れを中心に住んでもいいって条件も付けれたの
で、こちらの希望を再度伝えたの。最初の冥婚の相手についている汚物を消滅させたいから力を貸してほしい、と
でも冥婚で相手ができてしまって前の相手には執着とかは……
でも、あの汚物とはやりあってきた。汚物を消滅させたいがどうかと聞かれれば?
今回は条件が合致したから私も交渉をしたけども、手間がかかり過ぎる上にデメリットが多い場合にはどっちも消滅させた方が早いって考えてしまうのよね。交渉毎回とかはしないわねえ(笑)メイコさん交渉を多めにするとかすごいというか、魔女って感じするわねって思ったわよ~
※恵子さんの前回のお話でご紹介した魔女のメイコさんになります
魔女のメイコさん気になった方は下記のインタビュー記事になります
二人そろってね。ただ、こっちも準備期間が欲しかったからまた少し時間をおいたのよ。その間に二人の間にいろんな気持ちが生まれてくれればなお良いしね
双方の同意のもとに冥婚を破棄させることと、冥婚に使用した供物の焼却が基本になるわね。大まかには本人たちの同意が大事になるわね
そうね。一番いい形になったので後は汚物を処理するだけだったのよ
2回目の破断
交渉がうまくいかなかった場合には双方の消滅を予定していという恵子さん。
今度はもう一つの冥婚の破断を強硬手段をとることになりました。
無理なのもわかっていたし、交渉は手間がかかる割には成功率も低いのよね。だったらもう片方は消し飛ばしたほうがいいでしょ
残しててもいいこともないし、使い道もないし、土地神様も要らないっていうから汚物でいいかなあって部分はあるわね(笑)
(前のお話しで出てきますので気になった方は下記の恵子さんのレビュー記事を見てください) 本物のイタコ(口寄せ師)にここまで聞いちゃいました!実録!直撃インタビュー そうね、で強制破談したんだけども、今度は冥婚に使った依り代が見つからなくてね。あれも処分しないとまだ縁がつながったままになってしまうからね。で、探したんだけども簡単に出てくるものでもなくてね。何をつかったかも冥婚を組んだ人がもうなくなっていてわからない状態だったのよ
人形はコストが高かったから絵馬でもう一回冥婚の形を作ってから焼却処分したわよ。ただ、冥婚の破談とかは基本的にあまりないものだし、霊的なもの同士の縁結びとかも時間や手間がかかり過ぎておすすめはできないのよね。今回はたまたまいい条件だったの。普段だったらちょっとできないわねえ
消滅だけなら1か月くらいを予定してたんだけれども結果としては悪くないわね。ただ時間がかかり過ぎたのと私も疲れちゃったから少しの間は依頼とかをお断りしてわね
仕事にはできないわねえ。完全無償ではないけれども、これを無償でやってくれとかだと相当心の人い人じゃないと無理じゃないかな
ですよねえ。日本の霊能者でメディア展開とかもしてしっかりとした料金制のかたってかなり少ないですし
そういう部分も後継者が育たたない土壌にはなってるわね
冥婚騒動のその後
冥婚騒動を終了させ、その後のお話が少し。
うまくいってるのよ。で、そのままその離れに残るかそれともどっかの家を守護する方がいいかを話したんだけども
その方がたしかに色々といいかもしれないのよね。きっかけはともかく、縁があったことだから。かといって元の冥婚相手に対して何をするとかそういうのはもうないのよ。まだ時間はかかるけども守り神の方向に向かうならばその一帯の夫婦関係にご利益が出てくる可能性もあるし。いきなり家に入るのはあれだとおもったから話をして、一応二人のために小さな社を置いてもらったのよ
毎日じゃなくていいから気がむいたらお菓子とか果物とか、あと書物とかをおいてほしいって頼んできたわ
二人の希望がもう一度、生活をしたいだったのよ。今の時代で不思議だと感じる部分を理解して、二回目の人生の真似をしてみたい。自分たちがもう亡くなっていて人ではないことは十分理解してるのよ。だからなんというか、神様見習いの一番最初の段階に近いのかしらね
いずれあのお家から離れても、あのお家のことは守るだろうし、あのお社をもしかしたら数代後の誰かがもっと大きなものにするかもしれない。霊的なものに守られている家からは霊能者が出やすくもなる。今回は本当に珍しいパターンでうまくいったのよ。毎回はないわね
普通はないわねえ。ほとんどが消滅させて終わりだもの
今回のは聞いていても大変だったんだろうなって感じました(笑)
二体を消滅させるのは私が大変だったのもあってちょっとしたギャンブルよね、本当。でも、なんとかなってよかったわ
二人分の化け物がなくなったから体調不良とかもよくなったし、耳鳴りや霊的な現象もほとんどなくなったのよ。でも、長いこと冥婚に縛られていたから霊的な部分の刺激はどうしてもあるのよね。見えやすくなったりとか。でもそういうのも今度はい方向に向かってくれるんじゃないからしらね。守ってくれる存在も出てきているし
もしかしたら霊能者の多い家系になるかもしれないですね
それはそれで大変だからあまりおすすめはしないけれどもね。霊能力っていうのは使い方と修行とかが本当に大事だから
恵子さんのお話を聞いてると霊能力者のイメージがいろいろと変わります
先天的ならまだ違うんだろうけれども、私の場合は後天的なものだからね。自分が違うことをすぐに理解できる環境っていうのは大きいと思うわよ
恵子さんのお家にも土地神様がいるので長いスパンでみると霊能者が生まれる可能性があるんじゃないですかね?
できれば私がなくなった後には土地神様はしかるべき処置をしていくべき場所に行けるようにしてほしいわね。基本が悪い神様ではないから
どっちかというとそういう問題のある神様のほうが多いわよ。でもね、他所で忌まれるものが別の土地では信仰を集めてと着神になるというのは珍しくないの。ここの土地でもある話でしょ?
筆者と恵子さんの住む県には妖怪の名前を冠した町の名前があります。
また、ご神体が牛や馬などの寺院もあり、他県では妖怪であってもこの県では土着神として祭られているなども多くあります。
これは交渉という手段ではありませんが、元の土着の神と外来の妖怪が撃ち合い、妖怪が勝ったことに対し、住民が感謝と信仰をしたことで土着神へのステップアップとなったパターンになります。
そうですねえ、鬼とかもですけどもダイレクトに妖怪の名前の土地とかありますものね
山岳信仰よりも開祖信仰や土着信仰が強い土地だからね。まあ、大きなところがやんごとなき方の血を引いてる開祖がいるんだもの。多少不思議なことがあってもいいんじゃないかしらね
そうですね。山も神社もきちんと理解するとすごく特殊な存在に守られますよね
月詠信仰は珍しいのもあるけども、修行の場にはすごくいい場所なのよあの山。スキーも近くで出来るし
感謝していただくわよ。温泉も多いし、いい場所だった(笑)
それくらい気が抜ける場所がないと滅入ってしまうからね
冥婚の話を興味深く読み進んでいたのですが時々恵子さんが口にする消滅とゆう言葉が気になりました。読み終わった時、大正の男性と明治の女の子の事より殴って刻んで流された汚物と呼ばれた夫のほうが気になって仕方ありませんでした。刻んで流す事を恵子さんは消滅と表現されてますが消滅は成仏とは違う様ですし……消し飛ばすとゆうことは別の次元に飛ばすとゆう事でしょうか……?消滅を字面どうり理解すれば消えて無くなるとゆう事になるのですが……汚物と呼ばれた男性でも消えて無くなるのはあまりに気の毒なので大正の男性のように復活の目があると思いたいです。