動くひな人形!?中にいたものとは?

動くひな人形!?中にいたものとは?
執筆者:ゆい

多くのひな人形は新品ですが、中には何代にも受け継がれてきたものもあります。
今回はそんなひな人形が、現役イタコの恵子さんのもとに持ち込まれた時の話をお伺いしてきました。

目次

ひな人形の除霊

ひな人形の話を聞けるということなのですが
恵子さん
ひな人形の入れ替わりをしてきたのよ
入れ替わり、とは?
恵子さん
ひな人形って元々、守るためのものでしょ?その中に別のものが入ってしまってね。本来の守るものが追い出されてしまってから入れ替わりで中を交換してきたのよ
中身を交換したって感じですかね?
恵子さん
そうそう。で、縁起物だし大事なものだから陽子さんにもちょっと手伝ってもらって

陽子さんは恵子さんと同じイタコ仲間になります。
恵子さんが除霊関連に特化しているように、陽子さんは縁結びや縁切りに特化している方であり、今回はひな人形の中の縁をごっそりと入れかえ、本来の縁を取り入れるために同行してくれたそうです。

ひな人形だと何か所か有名なところもありますが……
恵子さん
場所はあってるけども、有名なお家じゃないわね。あの辺は結構何代も御雛様を受けついでる家はあるけども、展示とかしてない家も凄く多いから
蔵とか土蔵とかあるおうち多いですよね。お着物とかも三代引き継いで成人式で着ている家とかもあって私は好きな感じではありますけども
恵子さん
古いものを引き継いでる家は多いわね。で、あの辺は旧節句で祝ってるからその前に虫干しするんだけども、そこで人形自体に異変を感じたって言われてね。私まで話が回ってきたのよ
恵子さんまでくるということは何となくそういう異変というか、人ではないものだと明らかにわかってるやつですよね
恵子さん
人同士のトラブルで霊的なものが絡んでるときも呼ばれることはあるけども、基本的には人以外とのトラブルではあるわね
ですよね。しかし、ひな人形になんでそんなことが起きてるんですかね?
恵子さん
最初の予想だと、からの入れ物に入ったのかな?って思ったのよ。元々、人の形って入れ物や器として最適だからね。だから人形やヒト型のものっていうのはそういうのが入らないようにすることも大事なんだけども……ひな人形とかは人の思いとかも残ってるからどうしても器として狙われやすいのよね。物によっては人毛とかも使ってるからね
そうですねえ。手作りだと歯まで描き込まれるひな人形とかもあるので、すごくリアルなんですよね
恵子さん
人を模したものに人の一部を使うのはそれだけでも依り代になりやすいからね。それもあって、ひな人形を作る時点で中に守り神的なものを入れ込む家とかも昔はあったらしいのよね。そういう人形が大事にされて、器が器ではなくなっていく状態だとどうなっていくのか?って考えてみるといいかも
動かない座敷童のような感じですか?
恵子さん
だといいんだけども、人形って入れる事ができるから出すこともできるって考えてもらうといいかもしれない。もちろん、自分の意思で出て行くこともあるかもしれないし。一度そういうものが入った器は次の住人も入りやすい状態になってるといったほうがいいかしらね
それだとわかりやすいですね。何かの匂いとか残留とかある感じなんですかね?
恵子さん
それに近いわね。入ったときに中に止まりやすい環境ができていたり、手入れや信仰のしっかりとした家であれば自分の力をより強く出しやすくなるし
信仰はすごく大事だってあちこちで聞きますね。お雛様って粗雑に扱う人はほとんどいないと思うんですが
恵子さん
だからこそ、宿りやすいっていうのはあるわね
古いもの、大事にされてきたもの、敬意を払われているもの、人体の一部を使ったもの、人の気持ちのこもっているもの。ああ、こうやってまとめると本当にお雛様って依り代の条件全部そろってるんですね
恵子さん
そうなのよ。で、相手のお家を聞いてまず私一人でいってきたのね
はい

ひな人形との対面

ひな人形との対面
恵子さんは基本的に最初の対面は一人で行います。
恵子さん自身が一人で対応できるのかどうかの判断と、他の霊能者やイタコを連れてきたほうがより良い結果になるのかを見るためになります。

恵子さん
ひな人形は飾ってあったのね。それでまず、人形の中がどうなってるのかを対面で鑑定してみたのよ
どうだったんですか?
恵子さん
どうもね、元々その家で受け継がれてきたものではなく、あちこちを移動してきた形跡があったのよ
お嫁さんが持ってきて、また娘さんがお嫁に行く時に持って行ったとかの移動ですか?
恵子さん
それだとまだいいんだけども、質入れ代わりにお雛さまを渡して、というものとかもあってね。価値はすごく高い物だし、着物だってきちんとした生地を使ったものなのよ。男衆の持つ刀も切れ味は少し落ちてるものの、刃物として打ってある。作ったときの価値はとんでもないものだっただろうし、これをお祝いと護りとして与えられた娘さんはとても大事にされていたんだろうなあって思ったわよ
聞いていてもそれはすごく思いますね
恵子さん
でも、この辺りの土地でこれだけのお雛様を持てる豪商ってなると限定されてくるのよ。でもそうなると時期や時代が合わなくてね
豪商さんは展示や資料館になってますよね。資料館は私も行ったことがありますけども、倉とかが凄くてびっくりしましたもの。でも、その豪商さんではないとなると結構難しいですよね
恵子さん
そうなのよ。なので、考えてもらちが明かないからひな人形の中をもう一度見ていくことにしたのよ
そこで時代考証ではなくもう一度対話に行くんですね
恵子さん
そのほうがいいかと思ったのよね。で、あれこれと辿って行ってやっぱりこの雛人形は県外を経由してこの家にやってきて、この家に来てからは割と大事にされていたのよね
なるほど。あちこちを移動してきて安住の地に来たんですね
恵子さん
そんな感じになるわね
ではなんで、そのひな人形がそんなひどい事になったんですか?
恵子さん
もともとお雛様は血縁のものを守るには特化してるのよ。その子やその家に生まれた子のためのものだからね。それが見知らぬ所を大きく移動してしまい、守護する相手が変わり続けたり、時には守護する存在がいなかったりもしたのよ
男の子の家だとひな人形は出さないですからねえ
恵子さん
そうなのよ。でも、元々がしっかりとした祈祷を受けてるひな人形たちだから流転の間にもたくさんの縁を拾っていたのね。縁ってものは良いものもあれば悪いものもある。その中でいい縁をその家の子供さんにつけて、そうじゃないものは自分の中に取り込んで処理してきてたのよ。そうやって体内にはいろんなものが残留してしまっていた
あー……すごく頑張ってくれるタイプのお雛様なんですね……
恵子さん
そうなのよ。なのでそのよくない縁をため続けて処理が追い付かなくなってしまって、縁というものが内部で絡まってしまって霊的な瑕疵を起こしてしまったのよ
なんかあれに近い感ですか?いろんな武将を経由したけども最終的にいい武将の手に渡ってそこで名刀って呼ばれるようになった刀とか
恵子さん
まあ、考え方は近いわね。ただ、人の形を模してるから悪者もため込みやすい。そして近年はなかなかお雛様に対する祭事も簡略化されている、こうなってくると本来の力は出てこないし乗っ取られやすくもなるのよね
人の形って結構大事なんですね
恵子さん
すごく大事になるわよ。私も大規模な入れ替わりをするときは人形を使うこともあるし
だと、古くていろんな人の手に渡ってきて、呪物としての力もあって、現在は本来の力が出なくて、悪縁を体内で処理しきれないってことになるんですかね
恵子さん
そうなるわね
まずいじゃないですか
恵子さん
まずいわね。なので、まずはこの体内の縁をすっきりさせて、人形自体の手入れができる人をさがして、もう一回魂入れに近い状態にしようかと思ったのよ
とても面倒な気がしてきました
恵子さん
で、縁切りとか縁関連なら私よりも陽子さんが適任だから陽子さんにもお願いしたのよ

ひな人形の縁を切っていく

ひな人形の縁を切っていく
原因が分かったので入り取りセットする方法を取り入れることにし、援軍の陽子さんと一緒に日を改めて再度恵子さんは依頼者のお家に向かいました。
陽子さんは恵子さんのような武闘派ではありませんが、その分縁を切ったり結んだり、新しく引き寄せたりに特化しているイタコさんになります。

陽子さんの見立てはどうだったんですか?
恵子さん
雛人形を一つずつ手に取りながら、これはずいぶんと大変な思いをしてここまできたのねえって言っててね。丁寧に顔以外を撫でながら表面にある部分の縁の残滓を剥がしててさすがだと思ったわ
周りの人がみんなすごすぎますよね
恵子さん
陽子さんが雛人形の中でも何体かをそうやって撫でさすっていってね。そのあとにお雛様と真正面から向かい合ったのよ。そして“お手入れさせていただきますが、不得手ですので失礼があるかもしれません”ってちゃんと礼をとったのね
すごいですね……
恵子さん
その時に室内の空気も少し変わったのよ。で、陽子さんはすごく丁寧にお雛様の髪を解いて櫛を入れ始めたのね。櫛を入れるたびに空気が動くのがわかるのよ。その時に、結んであった丈長(姫や巫女の髪を結ぶもの)が動き始めてね。虫が動くみたいにうねうねしていて、ああこれも邪魔していたものの一つかって思って
髪を解く、梳くとかは思いつかないですよね
恵子さん
専門家は即見抜くからすごいわよね
恵子さんも専門家ですよ
恵子さん
それで、髪を梳かしていくたびにいろんなものが出てくるのよ。虫の念の残滓とか、羽の残滓とか。呪物としても完成度の高いものだったからそういうことにも巻き込まれてしまったらしくてね。陽子さんも凄く痛ましい顔をしながらしばらく髪を梳いていてね……一時間くらいそうしてたのかしらね。丈長が茶色になって腐ったようにして崩れてから、今度はほかの雛人形の髪を同じように梳いて行ったのよ。お内裏様とかもね
……………………
恵子さん
帯刀していた刃物をすべて取り出し、刃物が見える状態にして同じように一礼してから手入れに入ったのね。やっぱり同じように髪を梳くたびにいろんなものが出てくるのよ。牛の首だの、巫覡の名残だの。なので本当にいろんなところを移動してきたんだろうなってのがわかったのよね
めったに聞かないような単語が普通に出てきますね
恵子さん
で、全部の人形に対して3時間くらいかかったのかしらね。陽子さんが“中の縁はこれで取れますけども、恵子さんはどうしますか?”って振ってきたのよ
それは振りなんですかね?
恵子さん
残滓とかはちょこちょこ潰してたんだけども、お雛様の中の守りに噛みついてるのがいたからそれを剥がしたのよ。で、そこにまた陽子さんが今の持ち主の家との縁を結びなおしてくれてね。あとは人形師に連絡をして神の結いなおしをお願いしたのよ
いろんなところを経由するのも大変なんですね
恵子さん
アンティークと同じ感覚になるわね。いろんな人の良いものもよくないものも吸ってきてしまったから、処理しきれないものが出てくる。その中の良くないものが乗っ取りをしようとして抵抗をした。その抵抗の余波でお家の人が悪夢や霊的な現象を受けるようになってしまった。元を戻すことでそれも無くなるんだけどもね。ちょうど女の子のいるお家だったし、その子の守り雛になるように、入れ替わりを一度させることにしたのよ
入れ替わり、ですか
恵子さん
人形師がどっちにしても修理や結いなおしをしている間はほかの依り代が必要だからね。紙雛を作ってそこに一度移動させて、後日人形師から仕上がってきたら入れ替わりで内部に魂入れをすることにしてその日はかえってきたのよ
紙雛でもだいじょうぶなんですか?
恵子さん
一番簡素なものにはなるけども、中にいる守りたちもこちらが敵ではないことと、今の家の人が自分たちを受け入れたいという部分は理解してた見たいだからすんなりと移動してくれたわよ。手入れ中は毎日のお神酒、玄米、あればお餅のお供えもお願いしてきたし
どれくらいお手入れにはかかった感じですか?
恵子さん
二週間くらいだったわね。帯刀部分とかもしっかりと磨かれてきたし、帯とかも新しくなってむこう百年くらいは持ちそうな感じだったわね
仕上げは元の守り?を中に戻す感じですか?
恵子さん
入れ替わりで紙雛から元のお雛様たちに移動させて完成だったわね。おそらく元の状態、最初につくられた状態に近いんじゃないかしらね。入れ替わりをした後の紙雛をそこの家の子供さんが触ってたんだけども、その時に守りのほうがその子を認識するのを感じたのよ。心身がしっかりと調整されて守るべき存在もはっきりした。これはとても強いわよね
紙雛はどうしたんですか?
恵子さん
知り合いに頼んでちゃんとしたお焚き上げをしてもらったわよ。水流しとかはほかのものを吸ってしまってそれの入れ物になってしまう可能性を考えてしまうとね。それくらいにしっかりとした守りが中にはいっていたからね
しかし、そんなしっかりとしたものをオーダーメイドで作るってことは結構凄いお家がスタート地点だったんじゃないですか?
恵子さん
西のほうの豪商のものだったみたいね。なので、京都から魂入れできる人を呼んで作ったものでね。盗難にあってそこからだいぶ流れに流れてあの家に来た感じだったのよね。家の人も、あるっては聞いてきたけどもいつからあるのかは、はっきりとしないって言ってるくらいだったからね。ただ、元々商家であったからその流れかもしれないとは言ってたけども
そこまでしっかりと作ったものだから、本来の効果を取り戻せばこの先も長く家や子供さんを守ってくれるんですね
恵子さん
普通の人形でも、こういうことは起きやすいけども、あれだけしっかりと守りを入れてあるものは殊更よねえ
守りの中身って聞いてもいいですか?
恵子さん
魂というか、魂に近いものというか。何かの命を奪っているものではないんだけども、元ってなると植物の種になるわね。生命のもとになるから媒体としては霊能力者や祈祷師が使うにはいいものだと思うわよ
桃とか梅は神話とかでも出てくるものですからね。種があってそれに何らかの加工をしたという感じですか?
恵子さん
それだと人形の中に入らないからね。陽子さんが髪を梳いたのもそれだったんだけども、新芽と種を使った贅沢な香油をつくり、髪にしっかりと浸透させたのね。人形の中に何かを入れたら劣化させてしまうから、この方法は当時としたらすごいものよ
なるほど……なので、髪についた縁やそのほかを剥がしていって、手入れをして、という流れだったんですね
恵子さん
そのときに少し髪は抜けるのよね。なのでそれをつかって紙雛の中に入れ替わりもやりやすかったし。
そんなにすごいなら何かにつかえた感じですよね、髪の毛
恵子さん
それもできなくもないんだろうけども、せっかく守る相手ができて気力もしっかりしてるのに、水を差すのもあれでしょう?それに、私の家のものじゃないからね。私にはうちの神様たちがいるから。そんなにあれこれ手を出してもいいことは起きないものなのよ
耳が痛いです(笑)
恵子さん
こういう仕事をしてるとたまにそういう本物に触る機会があるのも、うれしいことにはなるわね
嬉しいことになるんですか?
恵子さん
はるか昔のすごい人たちの思いや記憶に触れることができるのはイタコでよかったと思えることだわね。その思いがどんなものであれ、今の世まで消えずに残っているのは強い思いだって私は見てしまうから
一般の部なのでその辺は触れないでおきますね
恵子さん
人の形のものにはいろんなものがあるから気を付けたほうがいいわね、本当に。今回はうまくいったけども、全部が悪意のあるものだとこうは行かないからね。守りの説明もして、今回はうまく行ったほうかしらね
お雛さまってなんとなく怖いっていう人も多いですからね
恵子さん
それくらい、技術的にしっかりと作られた芸術品と考えてもいいかもしれないわね
大事にしていかなければいけない文化でもありますしね
恵子さん
人の形のものは特にね。まあ、アンティークの人形とかもだけども最近だと、オーダーメイドの人形にもいろんなものが入ってしまったとかもあったからね。持ち主の思いが強いとね、そういうこともあるし
その話は改めて今度しっかりとお伺いしたいです
恵子さん
最近のオーダーメイドの人形は本当に綺麗よね
ですねえ。私も写真とかで見るのは好きなのでちゃんとお話を聞きたいです
恵子さん
この話は今度ちゃんと話すわね
はい。ぜひに。今日はありがとうございました

この記事を書いた人

小さいころから占いに興味があって、色々と勉強しているうちにどんどん好きになり、皆さんにも占いの良さを知ってほしくて記事を書いています。

知り合いに占い師や霊能力者、お寺の住職がたくさんいるので、その方たちにインタビューして記事を書いています。

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