執筆者:ゆい
某寺社で副僧侶の恵美さんは、時々霊的な仕事を請け負うことのある人です。
そして恵美さんのおばあさまは、地元で有名な霊能者であり千里眼の持ち主といわるほどの霊視の高さを持つ人だったそうです。
今回は、そのおばあさまに起きたある出来事をお伺いしてきました。
恵美さんのおばあさまって私あんまりちゃんと知らないんだよね
恵美さん
表にでてこなかったからねえ。私も麻雀がすきなばあちゃんってイメージしかないんだけどもさ。まあ、大往生だったし、葬儀の際にはあれこれあったからねえ
亡くなったの結構最近だよね?
恵美さん
だね。この間三回忌やって、あれこれやったから。まあ311の時は“これが最後の大仕事だから手伝え”って連れて行かれたからねえ……そのあとも、ちょこちょこばあちゃん乗せて向こうに行ったり、旅館が修繕されましたって手紙が来た時は泊りに行ったりしたからねえ
いくだけでいろんなものが寄ってきそうなおばあさまだよね
恵美さん
それはあるねえ。地震から2年くらいして宿と市場がだいぶ回復したので是非きてください~ってあって、言ったんだけどもさ
うん
恵美さん
犬の霊に“もうお前、上に行って大丈夫だぞ。ちゃんとなおってる”とか説得してたからね。亡くなった犬が宿が立て直されるまでは!って土地を守ってたりもしてね。もちろん、犬だけじゃなくどうしても娘さんの結婚を見守るまではって残ってた人もいてね。そういう人の説得もしていた
まったく心休まらないんじゃないかな?
恵美さん
まあそれはしかたないんだわ。ばあちゃんの性格上できるだけ上に行かせてやりたいって人だったから
復興をまさに見守ってた感じだよねえ
恵美さん
まあ、そういう上に行く途中の人とかもね、季節季節の挨拶に来るのよ。ほら、うち梅とか桜とかあるじゃん?ばあちゃんが花がきれいだってみてると、ばあちゃんに世話になった人が来て“ようやくきれいだと思えるようになりましたよ”って世間話してるの。で、ばあちゃんは、ばあちゃんで“早く上さいけ”っていうんだけども“まだ順番待ちなのでこうしてお邪魔してます”ってね。そんなときにはお供えとかちょっと多めに準備したり、季節の節句と祭事のさいにはお酒とか香の物を多く準備してたわ
酒屋も御漬物屋さんも近いのは良いよね
恵美さん
うん。終わった後のおさがりもおいしくいただいてたからね。ばあちゃんは最後まで家で過ごしてて、すごい気持ちのいい天気の日に亡くなったんだわ
人徳が天気にも出てるんだねえ
恵美さん
それは思ったわ。本人も“おらぁもあと少しだからなあ。風呂だけはちゃんとはいっておがねえと”っていつそうなってもいいように準備はしてたねえ。こっちもあれくらいの人がそういうから準備はしてたし。本人にも食べたいもの食べさせてたわ。うにしゃぶとか
うにしゃぶ
恵美さん
あと蟹。むこうからお急ぎでお願いしたら翌日には届けてくださってね。ばあちゃんに満足いく食事は出せたんじゃないかな。部屋にこれをおけとかも聞いたし。あとは、ばあちゃんからいろんなことを聞いたからそれも全部ノートにまとめてPCに入れてある。トラブルシューティング用にタブレットにも
トラブルシューティング
恵美さん
うん。ばあちゃんだからできることでも私じゃできないこともあるから
亡くなる前にいろいろと引継ぎをした感じですの?
恵美さん
引継ぎというか……こんな感じ(タブレットの画面を見せてもらう)
ああ、書簡とか文字もスキャンしてあるのね。お札的な?
恵美さん
そうそう。お札もだけど、こういう人って文字自体が力をもってるからね。一通りスキャンして取り込んであるよ。霊的なものへの対応にどこまで現在の技術が通じるのかを確かめたいという私の好奇心も若干ある
デジタルの時代(笑)
恵美さん
うむ。これが効果あるなら可能性は広がるからね。現状だとそこそこ。あって困るものではないって感じで助かってる
他にはないの?
恵美さん
あとはうちの教本。古い奴をスキャンして取り込んでる。あと曼荼羅のやつ。簡易で代用できるんじゃないかなって
デジタル化してますなあ
恵美さん
全部持ち歩かなくていいってそれだけでも便利だと思うわ。調べ物がすぐできる、持ち運べるっていうのはこの業界でも積極的に取り入れていくべきだと思う
それでおばあさまの残されたものも大体入ってるのね
恵美さん
そういうこと。普段から持ち歩いてるからね
人徳というもの
恵美さんのおばあさまはとにかく強い霊能力を持っていました。
その
能力は311などでも発揮され、晩年も現地に足を運ぶことが多かったそうです。
恵美さん
で、ばあちゃんがなくなった日は、みんなこれでもかってくらいに笑顔だったんだよ。もうやり残したこともなかったし、本人の希望の葬儀法も決まってたし。で、問題はなくなった夜だったんだけどもさ
?
恵美さん
ばあちゃんに世話になった人たちがみなさんいらっしゃってな……その中には311でばあちゃんに上に送ってもらった人たちもいてねえ……なんというか、お堂がそういう方たちであふれてしまったというかね。みなさんばあちゃんを御迎えに来てるというか、囲んでいるというか……まあ、数日から 四十九日までは残留する人も多いけどもばあちゃんはたぶんサクッと上に言っちゃうと思ってから
でも、その光景が見えるのも恵美さんだけでしょ?
恵美さん
うん。住職や兄たちは何となくはわかるけども可視化できるわけじゃないから、どうなってるんだって聞かれて
どうこたえたの?
恵美さん
お堂にひしめくほどの人たちがばあちゃんに会いに来てるって伝えた……
あー……
恵美さん
みなさんね、ばあちゃんに世話になったから案内役は自分が!って来てくださった人ばかりでね。私の知らない人たちもいたから、ばあちゃんが若いころからのそういう霊的な人なんだろうなあって
おばあさまは若い時から霊能者さんだったの?
恵美さん
うん。千里眼のある人っていうので有名だったみたい。私はあまりその辺はしっかりと聞いてはいなかったけども……ここまで葬儀に霊的な人たち来たのは私も初めて見たよ
何とも言えない光景よね
恵美さん
うん。とくに後年というか晩年というのかな?地震関連の人たちも多くて、みんな口々に“あの時に引き上げてもらえたから上に行くことができました”ってね。中には私も一緒にご供養させてもらった人もいてちょっとした歴史を感じたよ
そういう人たちってどんな風にやってくるんだろう
恵美さん
こんばんは、とか、お世話になってます、とかで来るからね……私も驚くというかびっくりするよ本当に……
………………
恵美さん
葬儀の間もみなさん庭で待ってらっしゃってね。お骨になってからもわいわいしてたなあ……昔は葬儀で宴会をしてたってのはこれかあって思ったりしたよ
まあ、田舎の葬儀はそうなるよねえ
恵美さん
全員分は無理だけど、一膳分は作ってもらってお酒と一緒にお供えさせて、もらったよ。で、ばあちゃんがまるでジャニーズのごとく迎えられて上に誘導されていくのをぼんやりと私は見てたよ。ばあちゃんが残ってたのは三日だったわ。それ以上は待たせられないって言って笑顔で向かって行ったというか……あれが大往生というものかってね……まあ、じいちゃんはこなかったんだけども
待って待って、旦那さん来なかったの?
恵美さん
じいちゃんいねえな、って言ったらお迎えに来てる人たちが“自分たちに譲ってください”って言ったからなんです!!ってなってたけどもさ。じいちゃんのことだから面倒だったんじゃないかなあ……大雑把な人だったし
おばあさまはそれに対しては?
恵美さん
じいさんがきとらんがまあいいか、って感じだったね。で、葬儀が終わって初七日も終わらせてほっとしてたらさ、散ってたはずの桜が咲いてるの。そういう存在に充てられたから。でも、それに対して何かするのも野暮だし、もう一回綺麗なものが見れたからいいやって私もそのままにしてたわ
恵美さんのそういう、不思議なことに対して拒否しない姿勢って私好きだわ
恵美さん
花だって咲くのに力を使うんだもの。無理にどうこうするよりもねえ。それに、ばあちゃんがなくなったんだから怪異の一つくらいあって当然って思ってたし。それが花だったから逆にほっとしたよ。変なものが押し寄せてくるとかじゃなくて
にぎやかな御迎えだったのはすごく伝わった
恵美さん
犬と一緒に散歩感覚で来てる人もいたからね。霊的な存在といっても生前のあれこれが大きく影響してるというか、改めて僧侶としてどうするべきか、どのような態度でいるべきかを学んだ気はする。そして……御車とかで来なくて本当に良かったと思う。万が一御車とかがばあちゃんにくるとしたら火炎車とか覚悟はしてたし
きみのおばあさまは妖怪かなにかか
恵美さん
可能性としては考えてた。伝承って言っても根拠なくはないだろうからね。普通に歩いて上に向かって行ったと思うからばあちゃんは人間だったよ
生前のおばあさまにもっとあっておくべきだったか(笑)
恵美さん
やー……結構つかれる人だったから(笑)
今も続く縁
稀代の霊能者であり、晩年まで活躍していたおばあさまの作った縁はそのあとも続いていくことになります。
今でもK市にはいくよね?
恵美さん
うん。一回Kちゃんにのせていってもらったしね。向こうでのご供養とかも頼まれたら可能なかぎり行ってる。それもばあちゃんから引き継いでるからね。ようやく向こうでもお寺とかの機能が戻ってきた感じで。正常になったら私は今度は普通に観光だけでいこうと思ってるけども
でもまだまだいろんなものは残ってるんでしょ?
恵美さん
だねえ。K市もだけどIやWとかはさらにひどいことになってたから向こうのほうに行った霊能力のある人は大変だったんじゃないかな。うちでも何人か災害派遣に行った人の除霊はやったけども、それじゃな追い付かないような場所だってまだあるし。そういうところには私は行かないしね。たかが10年じゃさ、人の思いなんて消えないもの。それが無念や悔しさなら余計にね。難百年って時間を経過しても消えないものだってあるのにたった10年でどうにかなるなんてないって思うわ
そう考えると10年って一瞬だよねえ
恵美さん
世代交代ですねとか言う人もいるけども、それはばあちゃんクラスの力があればね。そうじゃないから、時代はそこで終わりなんだよね。私は私の方法でどうにかしていくしかない
悟っている
恵美さん
なんというか、そう考えざるを得ないというかね。今だってまだ霊的な人たちでばあちゃんにお礼を言いに来る人は定期的にいるんだ。そこまで愛されて好かれて、訪れたいと思われるだけの人間がどれだけいるだろう?って考えてしまう。千里眼というか、まあ、透視や霊視、霊能力とかもすごかったんだろうけども人間力というか、人間性ってものになってくると私はあの領域にはなれないなあ
いまでも来るんだ
恵美さん
うん。ばあちゃんが今どんな感じなのかとかもなんとなく伝えてもらえるよ。仏さまになるってのはそれなりに大変なんだなって
三十回忌でクラスチェンジするんだっけ?
恵美さん
指導官が上位になる感じだねえ。だいぶその辺すっ飛ばしてるみたいだから、それもやっぱ人徳ってか人間性だねえ
端折れるんだ
恵美さん
相当飛ばしてるみたいだよ。基本がたぶんできてるからあとは応用だけなんじゃないのかなあ……まあ、大きな意味で見れば確かにいろんな人やいろんな霊的なものを救ったり、強制的に成仏させたりは確かにしてたから……そうなると、うーん、どうなんだろう。今度会うまでちゃんと調べておくわ
大雑把かつマイルドでいいよ(笑)
恵美さん
Kちゃんのそういうところすきだわ~
おばあさまは来ないの?
恵美さん
うん。ばあちゃんはすっ飛ばしであれこれしてるから結構忙しいらしい。仏になるってのはずっと修行ではあるんだけども、それはそれで休まるときがないのかもしれないし。ただ、むこうにはじいちゃんもいるから夫婦喧嘩してるらしい
夫婦喧嘩(笑)
恵美さん
生きてる時に夫婦喧嘩そんなにできなかったから存分にやってるらしい。まあ、向こうでも幸せならそれでいいよね
恵美さんが何かしてることはあるの?
恵美さん
月命日くらいかなあ。でもこれはうちはやるけども、普通の家なら法事とかで十分だし、普段はお仏壇に手を合わせるくらいでいいよ
最近実家帰ってないや
恵美さん
Kちゃん実家行った時に割とお参りもするし、気が向けば普通にお墓に一人でいって除草とかしてるから十分だよ
そうやって人を見るのは良くないと思う
恵美さん
見えてしまうものは仕方がないのだ。見ないようにもできないし。見えない人は見えないから
恵美さん大体の人の見えるでしょ
恵美さん
最近はそうだねえ……隠し事してる人とか程よく見えるというかね。まあ。あんまり良いものではないよね
それはそれで大変だっていうよね
恵美さん
ある程度シャットダウンする方法もばあちゃんのメモにあるから活用してるよ。そこまでの予想してたのかはわからないけども、データ化できてるからそこは便利だよ
次世代の霊能者のスタイルになるかもしれないじゃない?
恵美さん
どうなんだろうねえ……こればっかりは誰が同じように引き継ぐのかになるし。今のところ甥っ子か姪っ子のどっちかだろうし。必要ならばあちゃんが向こうからサポートするんじゃないかな?本当の意味での次世代になる存在には
その辺も今度詳しくお願いします
恵美さん
はーい。ちゃんと調べておきますね
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